「三宝」が整っている園は居心地が良い
2014年01月27日 月曜日
都市部の保育需要は供給量をはるかに上回っています。この現象はリーマンショック以来続いていますが、社会福祉法第24条に記されている自治体の保育応諾義務は果たされていないのが現状です。新卒保育者の半数、約2万人は他業種へ就職し、保育業界へ就職したにもかかわらず、短期間で離職する方々がいます。全国の保育園に通っている子ども数は212万人、保育士は38万人、保育士が足らないのです。多くの保育園では勤務時間が終わっても、翌日の準備や保護者の苦情対応をこなしています。離職理由のトップは賃金が希望と合わないことで、全保育士の60%が私立保育園で勤務してますが、平均月給は12年勤続で21万円程度です。
平均勤続年数も約8年、全業種に比べて4年も短かく、一度保育業界から離れると戻ってこないケースが多いのです。国が設定している基準賃金は2000年から据え置かれ、保育に関する公的支出はGDP比1%で先進国中では最低水準、昨年訪問したイタリア・ピストイア市では総予算の20%を子どもに投資しています。このような大差はどこから生まれてくるのでしょうか、保育業務を単に子どもを預かる仕事、子守り程度だと考えているからでしょう。
保育現場から再三にわたって国に対して保育者の処遇改善を訴えたことにより、2014・2015年度は年間数万円の上乗せ予算が実現しますが、先が見えないので一時金で支給する法人がほとんどだと思います。子どもに投資すると成人してから国に役立つ人間になると、先進各国は考え実践していますので参考にしてもらいたいものです。給与面もさることながら、労働時間内のおける子どもと接し続けている時間をどうとらえるかという根本的な課題もあります。
ほとんどの保育園では勤務時間の90%程度を子どもと一緒に過ごし、これが当たり前だと思い込んでいるようです。これも我が国風の風習で、子どもと離れている時間を保障しているのが先進国の考え方です。週40時間勤務だとすれば、10時間程度は子どもが居ない場所で、保育の質を高めるための研修、職員のコミュニケーション向上のための話し合い、企画会議、諸準備などの時間が保障されているのです。日本では「保育室からぬけて仕事をする」という妙な表現をしていますが、これはおかしな風土です。堂々と子どもからr離れて、保育の仕事ができる人的配置予算措置を早急に講ずるべきです。
育子園では新年度に向けて職員同士の話し合いを夜間に行っています。園長から言われてやっているのではなく、自発的に職員みんなで子どもにとってどんな保育環境設定にすることがベストなのか、先輩・後輩、年齢に関係なく意見を言える雰囲気が醸成されてきました。この風土は素晴らしいことで、仏教で最も大切にしている「三宝帰依(さんぽうきえ)…仏(仏さまに帰依し)・法(園の保育理念に帰依し)・僧(職員同志が帰依し)」が整っている状態だと感謝している日々です。
Posted in 前園長(11代)須田 益朗の実践ブログ