冬は虐待が発見しにくい
2014年01月20日 月曜日
虐待を受けた子どもを親から引き離して保護した後に、子どもにどのような課題があるのでしょうか。子どもの喪失感として、親の行動は犯罪であるが、親自身は子どもにとっては大事な存在だと考えている、避難による失われた友達関係、場所、思い出などが崩壊、新たな人間関係が不安定で、シェルター等で悩む、転居や転園・転校に伴う生活変化によるストレスなどがありますが、安全な場所に移ってからもストレス、トラウマ反応が現れやすいのです。
専門者による支援上のポイントは、子どもに心理教育を行い信頼関係が構築されたうえで、子どもがどんな虐待を体験したのかを理解し、親と子ども双方の主訴を把握すること、子どもの行動の観察、親子関係のやり取りの観察、その後の経過について見続けていきます。親のしたことを他者に話すことが悪いことだと考えやすいので、話すことは悪いことではないという意識転換を時間をかけて行うことです。
自分だけが虐待を受けているのではないことや、他の事例を話してあげながら、自分の体験を話そうとするようになっていきます。親子間や家庭内のネガティブな内容を誇張しがちになりますが、親としてちゃんと役割を果たしていることなどは、評価してあげることです。
子どもの気持ちを受け止めながらも、暴力は絶対にいけないことは伝えていかないとその子どもがいずれ加害者になる可能性が高いのが最大の課題です。虐待を輪廻させないこと、今の世代で止めることが当事者だけではできないのです。
平成25年8月に改正された防止マニュアルによると、身体的虐待に「叩く」が加わり、躾のために「叩く」を肯定的にやっている、叩かないと躾けられない養育者がいかに多いかということが記されています。保護者自身の困難さ、夫婦関係の課題、経済問題が背景にあることが多いのです。
さらに心理的虐待に加えられたのは「特定のきょうだいに虐待をするのを他のきょうだいが見ることも虐待とする」という項目です。他者が虐待を受けている場面に遭遇するだけで自分を重ね合わせ虐待を受けていると感じるのです。これは家庭内だけにとどまらず、公衆の面前で虐待することはそこに居合わせた人々も虐待を受けていることになると考えられます。隣近所からの虐待通報は6月・10月が多い窓が開く季節、夏や今の時期は家庭内での虐待が発見されにくい時期なのです。
Posted in 前園長(11代)須田 益朗の実践ブログ