育児語の豊かな日本語
2014年01月10日 金曜日
では、早期教育は子どもにとって必要なのでしょうか。生後7ヶ月で外国弁別が高いグループと低いグループに分けて実験してみると、弁別が低い母語に慣れた子どもの方が表出語彙数が多いのです。おおむね1歳までに母語に適した音声知覚が発達していくのです。
乳児への語りかけについては、乳児音声と対成人音声の違いは顕著です。対乳児音声は高い声、豊かなイントネーション、明瞭な母音、ゆっくりとした語り方、センテンスが短い、などが特徴的です。フランス語、イタリア語、ドイツ語、英語でも対成人音声よりも対乳児音声の周波数が高いという結果が出ているそうです。
対乳児音声で語りかけた人に対して赤ちゃんは注目し、対成人音声の人に対してはそうではないということからしても、日本の育児語例は豊富です。わんわん、ねんね、ぶーぶー、くっく、のように3または4拍文字と特殊拍が特徴です。なぜ育児語が必要なのでしょうか、それは連続音声からの単語の抽出の手段として、意味ラベル付すからです。日本母語の赤ちゃんは、「ん」「っ」などの特殊拍のある言葉を抽出しやすく、新生児は対乳児音声が好きで、8か月児は育児語が好むのだそうです。
保護者の中には育児語は使わないという方がいますが、子どもにとっては単語を覚えやすいという科学的見地からも意味のある言葉と言えます。養育者との応答性、スティルフェイス実験で顕著に表れるように、表情を変えない養育者に対して1歳の子どもは気を引く行動をしますが、反応しないのでイライラして泣き始めます。その後、いつものように表情豊かに養育者が接すると、赤ちゃんは機嫌がよくなるという結果から見ても明らかなのです。
赤ちゃんにとって難しい音声、母語ではない音声に対する反応を見ると、ライブ条件では反応を示し、TVやオーディオでは効果的でないということが科学的に証明されています。このように対乳児音声や育児語は赤ちゃんの言語発達に大きな影響を及ぼしていること、表情豊かな接し方も不可欠です。
Posted in 前園長(11代)須田 益朗の実践ブログ