様々な感覚を持ち備えて生まれてくる
2014年01月09日 木曜日
赤ちゃんの発達についての研修会で興味深い話を聞きました。
胎児・新生児期にことばへの感受性は出生直後から始まるのですが、イギリスの哲学者ジョンロップは、「乳児は何も書かれていない白紙(タブラ・ラサ)である」と言っていました。ところが現在では様々な感覚がすでに機能していて、味覚は甘さ、苦さ、酸っぱさ、無味を乳児の表情からも読み取れます。
視覚においても、人間の顔に興味を示し単純な図形には興味を持たないのです。なぜ人間の顔に興味を持つのかは解明されていませんが、ワシントン大学のメルゾフ博士は新生児でも模倣能力が備わっていて、相手の顔をマネする回路が出来上がっていることを研究しました。嗅覚においても、乳児は母親の母乳の匂いをかぎ分けます。
聴覚機能の発達は、胎生28週ごろまでに聴覚機能が発達し、腹壁や羊水ごしに外部の音を知覚するようになりますが、高い周波数成分は伝わりにくいので低い音や母音の方が伝わりやすいのです。聴覚を測定できるようになったことにより、吸綴法を用いて測定しています。おしゃぶりにセンサーがついていて、乳児が吸うとある音声が聞こえる装置を設定し、好きな音たとえば母親の声と他者の声で比較してみると、新生児が好きな音は体内で聴いていた、母語、母親の声、妊娠中になじみのある読み聞かせ文章、妊娠中に聴いたことのある子守唄を好みますが、父親の声には反応しないそうです。少し寂しい気がしますが…。
泣き方にも母語が影響していて、フランス語圏では終わりが強く、ドイツ語圏は最初が強いのだそうです。成人の音の聞き取りは最も効率の良い方法で最適化し、認知的負荷がかからないようにしているのです。英語話者にとって区別が難しい子音としてインドのヒンズー語、北米のトンプソン語を用いて乳児を対象に実験をしました。条件付き振り向き法という方法で、音が変わるとおもちゃ箱が開いて楽しいという強化子がもらえる設定です。
生後8か月まで英語母語の赤ちゃんでも80%はヒンズー、トンプソン語に反応していますが1歳児では40%へ下がってしまうのです。自分の生活環境に関係ない言語を聴かなくなっているのです。
子どもは白紙の状態で生まれくるのではなく、その子の特性をすべて持ち合わせて誕生しているというとらえ方が育児・保育の大前提だということを改めて学びました。一人ひとりの発達や特性を見守っていくこと、それが周りにいる大人の持っても大切な役目だということになります。
Posted in 前園長(11代)須田 益朗の実践ブログ