究極の菩薩行保育へ
2013年12月20日 金曜日
鳥取県米子市の「仁慈保幼園」が取り組んだ、たった1つの万華鏡から始まった長期間プロジェクト活動こそ、これから目指すべき保育の方向性です。子どものこと信じ切っている保育者がいて、子ども同士が話し合い仲間意識が強まり、時には思いどおりにいかない葛藤も経験できるのです。一人ひとりの子どもが自分の力量、発達に応じた参画ができる子ども主体のプロジェクトを体験できるようなセッティングをすること、大人と子どもとの関係性よりも子ども同士の関係性の割合を増やしていくことが保育者の大切な役目です。
このように保育者があらかじめ設定した計画を押し付けるのではなく、多くの保育先進国が行っている選択制、プロジェクト型、ドキュメンテーション掲示、エピソード記述掲示などを適宜ミックスした横断的保育は、大人主導の一斉保育でできない高次元のものです。世界の保育者が視察に訪れているイタリア・レッジョエミリア、プロジェクト型保育・教育が始まった聖堂前の「ライオン像」の前に立つと、子どもたちの歓声が聞こえてくるようでした。
像は台座を含めて高さ2.5m、市場がぎやかな聖堂前広場に向かって座しています。子どもたちは像を生きているライオンと見立て、自分との関係性や距離感、像にまたがったり、ライオンを描いたり、粘土造形をする中で、ライオンと一体感を感じたり、自分との違いを確認、模索したのだそうです。このように園の中だけにとどまらず、子どもたちが街に出て現地で体感、体験、想像、創造する取り組みは机上では得られない宝になっていくのです。
このように子どもが自ら興味を持っていることをサポートし、発展していけるように関わるのが保育者の本来的役割だということをレッジョエミリアで学び、荻窪北保育園と仁慈保幼園の実践活動を通して間違いないという確信を得ました。
育子園も同じ方向性の保育を行っていますから、他を学びつつ育子園らしいダイナミックな保育が展開できることでしょう。これができるうようになると日常的に子どもが園生活全般のことを話し合い、約束事も共有し、保育者はそれを応援する園になっていくと保育はもっと楽しいものになります。それは大人の自己中心的な保育ではなく相手中心の保育ですから、相手・子どもが望んでいることのお手伝いをさせてもらうという仏教保育の根本、相手の喜びを我が喜びとする菩薩行保育です。
そのためには「子どもは仏性そのものである、子どもは自ら学ぶ力を備えている、子どもの存在を丸ごと信じ切る」という大人の持戒があればよいだけです。これは職員間も同様ですから職員同士が相手を尊重し、相手の望みをかなえてあげることに徹していると、我欲が消滅し周りと調和した安穏の境地になっていきます。
先日、育子園の保育を見学にいらっしゃった法人は、東京都内で11か所の保育園と7か所の老人施設を運営しています。園の保育環境をご覧になって、大人主導の保育ではなく子ども主体の保育を行っていくと、子どもたちがこれほどまで遊びに没頭できること、大人の顔色をうかがわなくなると感銘されていました。保育園従業員だけで約800人もいる大法人ですが、一斉保育から子ども主体の保育へ移行していくきっかけになったようで、12月中に再度見学にいらっしゃる予定です。
12月21日に行われる「クリスマスお楽しみ会」に取り組んでいる職員の活動は、プロジェクト型保育の職員版です。子どもと保護者と職員がどうやったら楽しめるかを考えて話し合い、担当ごとにアイディアを出し合い、得意なことを取り入れ楽しみながらプログラムが膨らんでいくのですから展開は誰も予想できませんから、当日がどんなことになるか楽しみです。明日はどんな保育が繰り広げられるか、ワクワクするような園づくりを他園と共に学びあいながら研鑽していきたいと考えています。
Posted in 前園長(11代)須田 益朗の実践ブログ