人権を保障する保育園
2013年10月02日 水曜日
虐待を受けた子どもを親から引き離して保護した後に、子どもにどのような課題があるのでしょうか。子どもの喪失感として、親の行動は犯罪であるが、親自身は子どもにとっては大事な存在だと考えている、避難による失われた友達関係、場所、思い出などが崩壊、新たな人間関係が不安定で、シェルター等で悩む、転居や転園・転校に伴う生活変化によるストレスなどがありますが、安全な場所に移ってからもストレス、トラウマ反応が現れやすいのです。
専門者による支援上のポイントは、子どもに心理教育を行い信頼関係が構築されたうえで、子どもがどんな虐待を体験したのかを理解し、親と子ども双方の主訴を把握すること、子どもの行動の観察、親子関係のやり取りの観察、その後の経過について見続けていきます。親のしたことを他者に話すことが悪いことだと考えやすいので、話すことは悪いことではないという意識転換を時間をかけて行うことです。
自分だけが虐待を受けているのではないことや、他の事例を話してあげながら、自分の体験を話そうとするようになっていきます。親子間や家庭内のネガティブな内容を誇張しがちになりますが、親としてちゃんと役割を果たしていることなどは、評価してあげることです。
子どもの気持ちを受け止めながらも、暴力は絶対にいけないことは伝えていかないとその子どもがいずれ加害者になる可能性が高いのです。
親への支援として、子どもの安心感・安全感を高めるために話を聞く、褒める、家庭のルール作りによる一貫して安定した態度が不可欠です。
保育園、幼稚園、学校での対策は、職員がDV・虐待についての共通意識、子どもの心身への反応を理解、安全、安心、自信を高める関わり方、暴力を用いないコミュニケーションの体験学習などです。
暴力・加害行動を行う人の特徴として、自己中心的:自分さえよければ良い、無力なふり:~せずにいられなかった、被害者のふり:自分だって辛い、最小化:たいしたことはしていない、否認:そんなことはしていない、責任転嫁:相手が~だったから、責任放棄:どうかしていた、魔がさしたから、一般化:みんなも~している、男はみんな~などです。
家族間の暴力の特徴は、被害者から打明けられにくく潜在化しやすい、周囲の気づきによる発見とサポートが重要、孤立は加害者にとっても被害者にとっても最悪な状況をもたらすのです。
虐待事件を扱っている現場にいらっしゃる講師さんのお話は、事例を含めて理解しやすい内容でした。保育園は虐待を早期発見し通告する義務がありますから、たとえば食事場面での特異なガツガツ食べ、大人が手を上げただけで防御反応を示す、対人感情が浅く一貫性が無い、トラブルは力で解決しようとする、などの言動や身体負傷などを注意深く観察することになっています。何人にも侵すことのできない人権を保障する役目が保育園などの最も大切な使命です。
Posted in 前園長(11代)須田 益朗の実践ブログ