びくびくしないで暮らせる権利
2013年08月29日 木曜日
全国私立保育園連盟の保育国際交流運営委員会から、~世界の保育 学びと創造~の小冊子が発刊されました。OECDの保育白書スターティングストロングⅡから、世界の保育が見えてきます。世界は乳幼児期の保育を明確に、「投資」と位置づけています。幼いころ十分に受容され学んだ子どもの犯罪発生率は低くそれにかかる税金を使わず、納税してくれる人物になるという統計があるそうです。
アプローチの仕方は、イギリス・アメリカ・フランスで展開されている「学校への準備期間」という考え方と、北欧・中欧諸国の「幼児期は人間の広い意味での準備期間、生涯教育の基礎段階」があります。
海外研修の歴史を振り返ると、ドイツ、スウェーデン、ニューヨーク、ニュージーランド、フィンランド、フランス、イギリス、ハンガリーなどに年間20人の保育者が参加しています。2013年は昨年に引き続きハンガリー研修が計画されています。
日本のように子どもを集団としてとらえて、大人が動かす場面がほとんどないのが世界の保育です。子ども一人ひとりの気持ちや願いが尊重され、自分が一番関心があることを選択できる習慣が、自発的な子どもに育っていく基本でしょう。
ところが日本の多く保育園では保育園のカリキュラムに沿って、トイレに行きたくない子どもがいても一斉に行かせる、給食も保育者が量を決めて盛り付ける、昼寝をしたくない子どもを寝かしつけるという実践を行っています。大人誘導で効率的にやっているのでしょうが、一斉に行動するので子どもの待ち時間も多く、子どもが自発的に遊び込める時間を奪っているのです。
『子どもと暴力』(岩波書店:森田ゆり著)には、「自分はただあるがままですでに十分に尊い存在である、という自覚はその人の生きる力の源である、問題を抱える子どもの中にはそのことを幼児体験としてもち得なかった」と述べられています。
1995年OMEP(政界幼児教育機構)世界大会で発表された、「子どもが居るあらゆる場所や場面で、びくびくしないで暮らせる権利と、その子どもが一番関心があることを大切に保障してあげる」ことを大人は常に意識することを確認しました。
ドイツ・ゲンゼンキルヒュン市の児童福祉部門の幼児施設と地域社会の関係は、「保育施設は地域の財産なのだから、地域住民が様々に活用できるように開放することが求められている」と述べ、住民の話し合いやリクレーションの場として開放しています。
2011年のハンガリー研修ツアーのポイントは、「今のハンガリーの保育を一言で言うと、子どもが安心し安全と思って過ごしているときに、より良い発達ができると考えそれを追求しています。子どもが興味を持って遊べるものが用意された空間、子どもの遊びから子どもの発達をとらえて必要きあれば援助する保育者はこのような環境の中から、子どもは自分が大切な存在だと実感でき、自分で考えて選んで判断して行動できるようになるのです」と記されています。
このように保育先進国の様子を伺ったり、目の当たりにすると改めて、「子ども主体・子ども中心」の保育に徹していることが再確認できます。
「びくびくしないで暮らせる権利」を持っているのは子どもだけではありません。大人も子どもも何人も侵害できない唯一の人権を有しているのですから、みんなが居心地の良い場所づくりを育子園から広げていきたいと想います。
Posted in 前園長(11代)須田 益朗の実践ブログ