2013欧州で保育を学ぶ旅(30)
2013年07月31日 水曜日
イタリア・エミリア・ロマーニャ州都ボローニャでは保育園や社会福祉施設などを視察見学します。最初に訪問した保育園は、社会的協同組合が運営し行政が資金を出して建てた低所得者集合住宅内にある保育園です。社会的協同組合が保育園を運営するのは2000年からで、それまでは公的保育だけで運営されていました。この保育園の建物は公設ですが、運営は協同組合が行っています。市内も再開発が進んでいて、大小2カ所の保育園を運営しています。
7万人の内2万人が移民で中国系、北アフリカ系の移民割合が高くなっています。多民族が同じ保育園に通うという課題を乗り越えて、集合住宅内の保育園が2011年にオープンしました。2000年以降移民増加で待機児童が増加して、公立保育園だけでは賄いきれなくなった背景があります。所得に応じて保育料は変化します、15人定員のうち移民の子どもたちの国籍は全て異なっています。
1歳から3歳までの子どもが通っていて、地域の特性に合ったものを考えていますが、家族が最も大切だと考えますから、保育園は家庭の肩代わりをするものではありません。家族を園の活動に巻き込むことを重視し、保護者が園内にいつでも出入りできるようにします。環境配慮型保育をめざし、自然素材やリサイクル品、紙おむつは使わずに、家庭で使っているキッチン用品なども活用しています。
保護者が参加しやすい行事日程を提案しているので100%の保護者が参加し、他にはワークショップ等も行っています。治安が悪い地域なので園庭に設置しておいた遊具が夜間に盗難にあってしまったそうで、対策を急いでいるところです。子どもの活動によってアトリエ、読書、食卓、などのゾーンを配置しています。開園は7:30から18:00までですが、午前中だけの子どももいます。
保護者と相談して、利用時間を決定していますので家族の生活リズムを重視し、家族で過ごせる時間を大切にしてもらうように配慮しています。1970年代から女性支援として、このような家族重視の保育が行われるようになってきました。公立の保育園、小学校は6月の第1週目で終わりますが、この保育園は7月末まで行っていますから、公立保育園に通っている子どもたちも受け入れています。
土日は休園ですが、子どもの誕生パーティー会場としての貸してほしいというリクエストがあった場合は開園します。保育園は公共施設なので園を利用していない方でも利用可能です。公立保育園は9月10日まで夏休みですが、この園は民営化されてから8月に夏季期間の保育が始まりました。職員は長期休暇が取れなくなりましたので、年間30日の休暇を交代で休むように工夫しています。
移民が多い地域で多言語の子どもたちが通っているのすが、子どもはすぐに溶け込んでいきます。各国とも保護者対応の方が難しく、自国文化を大切にしてあげながら話し合っています。7人の子どもに対して保育者1人です。シングルマザーも多く一人子が50%です。子どもにとって居心地が良い場所だと感じられること、他の子どもと過ごす中で社会性を身に着けていくことを重視しています。
Posted in 前園長(11代)須田 益朗の実践ブログ