2013欧州の保育を学ぶ前旅⑤
2013年05月31日 金曜日
フィヨルドを滑るように進むフェリーにはカモメが数羽お供してくれます。高く、低く、左右へと自由に飛び回るカモメはまるで子どもたちのようです。フロムから船とすれ違うたびに乗客はお互いに手を振って挨拶をします。これも「つながっている」瞬間です。
ベルゲンの海岸線から深く切れ込んだソグネフィヨルドの全長は204㎞にもおよび、太古に氷河によってゆっくりと削り取られV字谷は1,000mを超える峰々が連なり、水深は何と1,300mもあるそうです。風が無い時は水面はまるで鏡のようです。水深が深ければ少々のことでは水面にさざ波さえ立ちません。日常生活では日々の目の前だけの現象に一喜一憂してしまいがちですが、この雄大なフィヨルドの静けさに倣い、何事にも動じず、思慮深い度量の人間になる大切さを学びました。
世界最大スケールのフィヨルドの中でも今回クルーズするネーロイフィヨルドは、ユネスコ世界自然遺産に登録されている景勝地です。日本で出発前にチェックした天気予報は、連日ほとんど傘マークでしたが、当日はまさかの雲一つない青空、遥々ここまでやってきた甲斐がありました(本来はどんな日でも有難い日なのです…)。フィヨルドの斜面に段々畑のような住宅が見えてきました。一軒々がカラフルでとても個性的なこだわりの一軒家ばかり、一斉画一ではないオンリーワンの世界です。ここで暮らす人々の心の豊かさが感じられます。ネオンサインの世界とは無縁の自然に身を任せた生き方を選択している「こだわり」を伺ってみたいものです。
ノルウェー語で「山間の小さな平地」という意味のフロムに到着しました。赤い駅舎や黄色いショップ&レストランが山の緑と青い空青い水に映えます。船上はあんなに寒かったのに、船から降りるとまたもや半袖で過ごせるのが本当に不思議です。山間の小さな港には白亜の大型クルーズ船が停泊し、乗客が大勢降りてきます。豪華クルーズ船といえば世界の大海原を悠々と航行するイメージがありますが、海岸から遠く入り組んだ場所にもツアーがあるようです。
フロム山岳鉄道の出発まで少し時間があったので、ショップに立ち寄りました。店内は毛皮やウールセーター・手袋、毛皮ブーツなど寒い国ならではの品揃えです。なかでもトナカイ革製品の滑らかでソフトな肌触りは、合皮と疑いたくなる感覚です。トナカイの帽子、手袋、ジャケット、バッグ、財布は元々物価の高い北欧ですからとても手が出る金額ではありませんでした。
静かな山間に警笛が何度もこだまし、フロム鉄道山岳列車が入線してきました。1940年開通の鉄道で世界中の鉄道ファンに知られる山岳ルートです。ダークグリーンの車体、内装は温かみを感じる無垢材にオレンジのシートです。シート配列は左右2列席と3列席になっていて、事前に調べておいた風景の良い3列席窓側に座りました。
オスロ行の急行列車乗り継ぎ駅、ミュールダールまでのわずか20キロメートルを標高差≒900mの山道をゆっくり60分かけて走っていきます。万年雪を頂く山々、凍結した湖、ヤギなどの牧場、渓流に注ぎ込む断崖から流れ落ちる無数の滝など常にシャッターを切ってしまいます。
Posted in 前園長(11代)須田 益朗の実践ブログ