人間とチンパンジーの違い
2013年04月24日 水曜日
子ども総合研究所主催の「子ども発達基礎講座」が行われました。地下鉄東西線九段下駅から徒歩5分の日本私立学校振興・共済事業団が会場でしたので、靖国神社へ参拝して参加しました。講師さんが京都から新幹線で上京する時、ホームで電車が大好きな3歳の男の子がいました。その子は新幹線に乗って何と言ったでしょうか?「電車はどこへ行ったの?」と言いました。3歳の子どもの見方、感じ方の特徴を表している表現だとおっしゃっていました。
人間の発達の全体像のキーワードは自我・自己と社会的な交流活動です。寝ていた赤ちゃんが座位、ホフク移動、直立2足歩行、道具利用、音声言語を獲得していきます。生後4ヶ月で各発達段階への準備ができているようです。スプーンを使って食べるようになるには、親指と人差し指でつまめる機能や腕の動き、物と口との距離感覚が必要です。スプーンを定位する感覚を得るには、自分と好きな人を繋ぐ経験を重ねていることが必要です。
自分を表現する行動の基礎は好きな人との交流で、京都大学では人間とチンパンジーと比較しています。人間と他の動物との発達の違いは、人間だけが笑うこと、歩行発達が遅いことです。熊本霊長類パークでチンパンジーの赤ちゃんにミルクを飲ませてみると人間の赤ちゃんとの違いがあります。チンパンジーは顔を見ません、人間だけが相手を見ながら飲むのです。人間の赤ちゃんは生まれた時から相手との交流を大事にしているのです。他は生きることだけに集中しているようです。
人間の子どもは転んでケガをすると、大声で泣いて周りの人に知らせますが、チンパンジーは泣きません。大声で泣いている子どもに周りの人が反応して助けてくれるから泣くのですが、助けられる経験をしないでほっとかれているとやがて泣かなくなるそうです。
仰向けに寝ている1ヶ月児と5ヶ月児の違いは、左右の回転軸の3種類を獲得できることで世界が大きく広がることです。原子反射から随意運動に発達していくことで、体の自由度が広がるだけではなく、相手とのやり取りができるようになります。おおむね4ヶ月後半では左右2つある物を見ることができるかで左右の脳が機能しているかが判断できます。
赤ちゃんが自分から笑顔を自発的に発するのもおおむね4ヶ月頃からです。そのためには周囲からの働きかけが必要です。
おおむね4ヶ月目で右手の親指の開きと左手とは差がありますが、7カ月では両手が同じ程度に開くようです。持ち手が左右自由になるのもこの頃の特徴ですから、積木を左右の手で持ち替えたり、他者と視線を合わせて微笑みを浮かべます。左右の発達が整ってこそ、はいはいができるのですから、そろそろ準備が整ったという発達が見通せます。
チンパンジーと人間との違いは他者とのコミュニケーションを生後間もないことから現れているのが特徴的でした。それは見ることから始まっているようですから、体は動かなくても目で物事を見据えているようです。赤ちゃんが元来備えている力を十分に発揮できるようにするには、発達に応じた大人の働きかけが必要で、積極的に自ら遊べる子どもになっていくのでしょう。
Posted in 前園長(11代)須田 益朗の実践ブログ