子どもを引っ込み思案にする育て方
2013年04月17日 水曜日
小児科医として50年にわたって子どもの成長を見守ってきた平井信義先生は長年の経験知として、
『子どもを引っ込み思案にする育て方は、親がつくりだしているのです。子どもに任せることをしないで、手を貸し過ぎたり、あれこれと言ったりする育て方をしていませんか。しつけをしたり何かを教えることとは違うんです。子どもには自分から発達する能力が備わっていますから、その能力を「見守って」いることが非常に大切な教育になるんです。教育とかしつけとか言うと、何か親の側でしてあげなければと思うかもしれませんが、「見守ること」「任せること」が最高の教育なのです。子どもの能力を信じてあげることです、とおっしゃっています。
親が子どもを引っ込み思案にしている、させているという捉え方は育児の有り様を見直すきっかけになります。引っ込み思案な子どもだから親がかかわり誘導しなければと思いがちですがそうではないようです。子どもは自分で自身の問題を解決する力を持っています。親は「待つ」という実践をすること、急いで結果を求めることが最もよくない育児です。子どもの発達哲学者A・ゲゼル先生は、子どもの発達は、右に揺れ左に揺れながら上昇していくもので、「いたずら」が多い時期があるかと思うと少ない時期もあり、「けんか」についても同様です。このようなことからしても「待つ」育児や保育、「見守りながら待っている」ことが大人の役割です。
平井先生は、子ども同士のケンカはとても大切で、ケンカしながら自分の力で処理することによって自発性の発達を促し、社会性も発達させています。意欲のある子どもはケンカをしながら友だちとの付き合い方を学んでいくのです。ケンカと仲直りを何度も何度も繰り返しながら、だんだんと相手の心を理解し、自分を理解してもらえるようになり、友だちとの信頼関係を作り上げていきます。親はケンカができない子に育てないでください。ケンカを悪いこと、ケンカをしかるように接すると自発性の発達が妨げられてしまいます。その結果、ケンカさえもできない、意欲の乏しい子どもになってしまいます。、とおっしゃっています。
育子園では毎日どこかでケンカが起こっています。平井先生のおっしゃるとおり「自発性の発達」が促されている喜ばしいことです。子ども集団でケンカが無いことは、意欲が無い子どもたち、自発性が乏しい子どもたちの集団だということになります。育子園の保育者はケンカをそっと見守りながら待ちながら様子を観察しています。ある園ではケンカが始まりそうになると保育者がすぐに仲裁するそうですが、理由は保護者へ説明するのに苦労するからだそうです。
保護者対応のために自発性の芽を摘むというのは本末転倒です。何のために子ども集団が形成されている園に通っているのか、「ケガは子どもの権利」、「ケンカも子どもの権利」ととらえ、生きる意欲・生きる力の有る子ども像を大切にしたいと思います。そのためには繰り返しになりますが、「見守りながら、待つ」ことが保育者のスタンスです。
Posted in 前園長(11代)須田 益朗の実践ブログ