日本の保育を50年以上見守って
2013年02月28日 木曜日
東京都昭島市「わかくさ保育園」の西川昌弘園長先生にお会いすることができました。お会いすることができた…、昨年12月から是非お会いしたいと願っていて、ある保育研修会場で名刺交換をさせていいただく有難い機会を得ました。お会いしたかった理由は西川先生が保育業界誌に投稿された、日本の保育界の歩んできた道と今後の方向性についての解説が非常に解りやすく、共感し感銘を受けたからです。
投稿は数十年間におよぶ幼稚園と保育園を一緒にする・しないという議論から始まります。昭和の時代の幼保一元化問題は、保育園に公費が投入されることに対する幼稚園側からの不満でした。時は流れて今回の幼保一体化議論は、保育園の待機児童問題の解消を定員割れしている幼稚園を活用して一気に解決しようとした一面もありました。
総合こども園は成立せず、現状の多様なスタイルを存続することもでき、認定こども園へ移行することもできるという選択肢が残ったものになりました。しかし、制度設計ばかりが誇張され、最も大切な「どのような子ども像を目指しているのか」が不明なのです。そもそも3歳以上が教育で未満は教育ではないという国の考え方を保育現場から見直していく必要性が高まっています。
西川先生は50年以上にわたって保育園と共に歩まれた道のりをこう振り返っていらっしゃいます。
①昭和30年代は幼稚園の真似をして、保母主導の年齢別一斉保育時代でした。
②昭和40年代は長時間保育が始まり、一斉保育では対応できないと思い始めました。一斉保育ではないヨーロッパの保育が伝わってきました。
③昭和50年代に西川先生は、モンテッソーリを参考にしてストレスの少ない遊びを生活の中心にした、様々な保育備品・教材・教具を配置し、子どもが自主的に遊び、学習し、掃除、食事準備片づけができる環境になりました。
④このように子どもが自主的で個別的な活動ができるようになると、保育者は「見守り」のポジションが取れるようになりました。個別の援助が必要な子どもがいると、一対一の対応ができるようになれたのです。
⑤一斉に同じことをやらせることが少なくなると、年齢別のクラス編成は必要なくなり、縦割りのクラスが編成できました。異年齢混合集団は、子どもが育つ本来の自然な人的環境です。少し年上の子を目標に真似をして学び、下の子のお世話をしたりする中で自然に社会性が身についていくようです。
⑥子どもはそれぞれがやりたいことに取り組んでいますから、保育者の大きな声が聞こえないのもこの保育の特徴ですが、それは子どもとのかかわりが一対一だからです。大きな声は必要ないのです。
⑦この保育のもう一つの特徴は、発達段階の違う異年齢児の集団を活かした保育であるということです。発達段階が違う子が交じり合っていることは、非定型発達の子どもを受け入れやすいのです。年齢別のグループで行う方が望ましい活動の時間を設ければよいのです。
⑧このような子どもの最善の利益を追求している園はまだ多数とはいえませんが、着実に増加しています。これが「望ましい保育所保育」だとイメージしていただけるでしょうか。
⑨そもそも小学校入学までに身につけ獲得すべきことは何なのでしょうか、小学校の授業についていける体力と身体的運動機能、そして先生や友達と支障なくお付き合いできる社会性の獲得です。それは遊び主体の保育でしっかり身につけています。知的にも一年生に必要な力は十分獲得しています。
西川先生は80歳を迎えられますが、長年の保育界変遷を見続けられ試行錯誤され体験的に獲られた保育理念と実践は、育子園で行っている子ども主体・子ども中心の見守る保育と一致しています。このスタンスが子どもにとっても保育者にとっても望ましい保育だとおっしゃっているのです。2013年度中に是非ともわかくさ保育園を訪問したいと願っています。
Posted in 前園長(11代)須田 益朗の実践ブログ