欧州で子ども主体の保育を学ぶ旅25
2012年10月24日 水曜日
今回訪問したイタリア2市の保育環境視察研修は充実した内容でした。レッジョはその名を世界にとどろかせていますが、ピストイアの環境設定も非常にクウォリティが高く、目を見張るものがありました。
今回の研修旅行ではピストイアの3~5歳児を見学できなかったので、0~2歳児の園、3~5歳児の園、そして小学校へのアプローチを学んでみたいと思います。白川町との姉妹都市交流をとおして日本と繋がりが深いという点もピストイアの好感度が高い要素の一つです。
ピストイアとレッジョ・エミリアを訪問して、その保育理念と実践を学んで感じたことは、
①一般的に保護者は園に対して、自分の子どもにどんな保育をしてくれるのかどんなサービスを提供してくれるか、を求めますがレッジョでは保護者に次のように問います。これは大変重要なポイントです。レッジョでは保護者に対して「あなたの子どもは地域のために何ができますか、貢献できますか」を問うのです。子どもの基本的人権を本当の意味で保障しつつ、社会の構成員としての義務も果たしていくという理念と実践です。
この考え方を伺って、育子園に通っている0歳児ができる地域・社会貢献を考えてみると、たとえば園の周辺に散歩へ出かけるだけで地域の方々が笑顔になり、話しかけてくださるのです。これは0歳児がすでに行っている素晴らしい貢献、私造語ですが『存在貢献』とでもいうべきもので、その人がそこに居るだけで周りの人々が幸せになる最高の貢献、布施行といえます。
さらに6歳児までの間にも一人ひとりの発達に応じた自発的な言動で、地域社会を活性化する取り組みができるはずです。そうすることによって子どもは自分のことを地域・社会が大切な一員として認めてくれて、その存在にほどよい期待をかけていると感じることでしょう。おおむね3歳頃までにその基礎ができるとされている、『自己肯定感(自分を絶対的に愛してくれる親がいる、周りの人がいる、自分は大切な存在だと思える)』は親を基として周りの人々の人的関係性によって醸成されるのです。
その関係性に加えて、地域・社会という公共的関係からも、子どもの存在を大切な構成員として捉えるようになると、親と周りの人々との関係における狭義の『自己肯定感』と、地域・社会との関係における『地域・社会肯定感』が相乗効果となって力強いダブルスパイラルができていくのでしょう。たとえば公共資産や風習・慣習などを損壊する自己中心的な言動も、地域・社会の構成員として0歳児を大切な存在として捉えてこなかった反省ではないでしょうか。地域・社会から『自国肯定感』へ拡がり、『地球肯定感』へ高まっていくと真の平和環境が見えてくるのでしょう。
たとえばレッジョで行っている取り組みのひとつ、地域にある商店の看板作りを子どもが行うなども好例でしょう。
人は人から信じられ任されると、底力を発揮きるのです。
Posted in 前園長(11代)須田 益朗の実践ブログ