欧州で子ども主体の保育を学ぶ旅23
2012年10月22日 月曜日
レッジョ研修の質問時間続編です。
質問⑥:自発的に活動しない子どもに対する保育者の関わりはどうしていますか。
回答⑥:保育者は子どもの興味の「カギ」を見つけることをおこないます。とにかく子どもの意見を子ども目線で聴き、大人が高い目線で質問するのではなく、その子の気持ちを得るために聴くのです。子どもは自分で興味のあるものを見つけられないこともあります。ブラブラしているうちに、他の子が遊んでいるのを見て、その子がひらめくこともあります。
周りを見ているという行為もその子の興味を引くものを探している時間です。5歳には5歳の時間観念があり、2年間一緒に過ごした子どもたちがその日何をするか、ケファーレで意見を出し合います。
以前こんなエピソードがありました。ある男の子がサッカー選手を粘土で作っていたのを見て、「みんなで作ってみたら楽しいのじゃない、22人作ってサッカーの試合をしてみよう」と提案すると、その日には行わず、次の日に彼は「サッカーチームを作ろう」と発言しました。保育者が押し付けるのではなく、ネゴシエーション、取引し子どもにも責任を持たせたのです。
子どもの自発性を引き出すのは、まずやる気があって、それを引き出していくことです。子どもと大人はお互いに責任を持つことです。葉っぱを集める時に、枯れた葉っぱを集めてみようと提案すると、季節の移り変わりを感じたりするきっかけになるのです。大人が本当に観察していると子どもを理解できるのです。子どもは大人のことをよく見て観察しています。
質問⑦:外遊びと室内の保育環境についてどのように考えていますか。
回答⑦:イタリアは室内を重視しています。庭が狭い園が多いので、外と中とのバランスを取っていくのは大切です。イタリア人は暑がりで寒がりですから、温度変化が少ない石造りの建物ですから室内で過ごすほうが快適です。レッジョでも土地の確保ができれば、外遊びが思う存分できるようにしたいと考えています。室内も園庭も全部が園ですから、藤棚を観察したら室内でその絵を書いたり、葉っぱを室内のライト机に置いて観察したりすることで、室内でも外遊びをすることができるのです。
質問⑧:子ども一人ひとりを観察するドキュメンテーションを26人の子ども全員にすることはできるのでしょうか。
回答⑧:一日に全員は無理です。3年間でとらえています。例えばいきなり8人の子どものドキュメントは作成できませんが、経験を重ねることでだんだんと8人分作成できるようになっていくのでしょう。プロジェクトとプログラムの違いを理解することです。子どもが何をしているかよく観察することはプロジェクトといいます。ドキュメントはそれを活性化することができます。
質問⑨:民主主義、人権を保障した上で成立している保育実践、子どもに責任を与えることの難しさがあると思います。子ども同士のトラブルに対する保育者の対応はどうしていますか。
回答⑨:コミュニティは全員が参加しなければ成り立ちません。大人の社会と同じで、グループである限りは、ディスカッションが大事です。グループだからケンカに発展することはいかがなモノでしょうか。トラぶっている理由は保育者が聴いてあげます。いわゆるキレる子どももいます。ヒートアップを下げるように場所を変えることもあります。子どもにも感情があり、モラルを理解できる日が来るのでしょう。激しい感情や暴力をふるう子どもに対しては、グループの意味を伝え理解し合うことです。
(文責:園長)
Posted in 前園長(11代)須田 益朗の実践ブログ