欧州で子ども主体の保育を学ぶ旅⑲
2012年10月15日 月曜日
レッジョ・エミリアで3泊したホテルは、駅南口のロータリーから見える場所にありました。フィレンツェから電車でレッジョ・エミリアへ到着したのは22時を過ぎていましたが、駅近でスムーズにチェックインが完了しました。欧州の多くの国の1階は0階と表示されています、イタリアも同様でホテルのレセプション(チェックイン手続き場所)は0階にあることが多いようです。宿泊先のホテルは0階から1階(日本の2階)は階段しか無く、20キロ程度のスーツケースを持ちあげるのも、育子園の男性保育士が活躍しました。
ホテルのレストランで朝食を摂る時の楽しみは、その国のコーヒーを味わうことです。5年に訪問したコーヒーの原産国、エチオピアのコーヒーセレモニーは衝撃的でした。あれほど濃度の濃いコーヒーは未だお目にかかったことはありません。今回のイタリア、スイス、オーストリア、ハンガリー、チェコもそれぞれ趣があり朝のゆったりとした時間を過ごすことができました。
朝食が終わると9月の爽やかな気候の中、レッジョの研修会場に通いました。会場は駅北口から徒歩5分、レッジョ・エミリア駅構内の地下通路を通って通いました。ホテルのある南口は旧市街のある人口密度の高そうな地域ですが、研修会場のある北口は駅前に大きなバスターミナルがあり、低層建物や工場等がある広々とした地域のようです。
研修会場のロリスMalaguzziセンターは約12000㎡の敷地を有しているレッジョ·チルドレンの本部事務所があります。この場所は旧ロカテッリチーズ倉庫の敷地だったそうですが、レッジョ·エミリア市が1998年に購入し、市内の北側の変革シンボルとしてレッジョチルドレンの拠点としました。2006年2月にオープンした同センターは、レッジョの専門的能力の開発や研究、教育と文化を、イタリア、そして世界の人々の体感してもらうための出会いの場所です。希望と想像力、アイデア、異なる文化やすべての年齢層に開かれた国際的な場所です。
同センター内には、アーバンアトリエ、展示ホール、レッジョ·チルドレンの本屋、レッジョ·エミリア市立乳児幼児センターや保育園の文書および教育研究センター、研究とイノベーションスペース、カフェテリア、レストラン等があります。そして今回の研修が行われているミーティング場や会議室等で教師、研究者、そして家族のための専門的能力の開発·研究機能も備わっています。
実際に訪問してみると、敷地内の建物の一部は市が購入する以前から建っていたであろう、歴史ある建物と最近建てられた近代的な建築物とがうまく融合していました。特に午前中の研修を終えたメンバーがランチタイムを過ごす、カフェテリアと屋外テラスの空間は採光に工夫を凝らし、白を基調とした内装と椅子・テーブル、吹き吹け天井と空間の広がりがゆったりとした印象です。
ランチメニューは洒落たキッチンカウンターで好きなものを好きな分量チョイスして一人10ユーロ(≒1,000円)、飲み物も数種類有りますから食後もデザートを食べながら過ごせる環境です。ユニークだと思った備品は、丸椅子の4本脚が床面でラウンド状に繋がっていて、体重移動するとロッキングチェアのように揺れて、バランスをとる面白さを味わえる構造になっていました(写真右下)。
研修は同時通訳を介して行われますから時間も押せ押せになりがちで、講師、通訳、研修生共々頭をフル回転させた後のランチタイムが、このように洗練されたデザイン環境で過ごせるのは贅沢なことです。日本のいわゆる食事をすることが目的の社員食堂とは基本的考え方が違っているようです。隣にはショップがあり、レッジョの書籍、Tシャツ等のお土産品と共に、チーズの名産地らしく美味しそうなチーズも販売していました。
このようにセンターは、集中して学べる空間と息抜き出来る空間のバランスを考えてデザインされているのです。
Posted in 前園長(11代)須田 益朗の実践ブログ