佼成育子園[こうせいいくじえん]-東京都杉並区

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園のこだわり

欧州探索旅①

2012年10月31日 水曜日

resize1615resize1616ベネチアの観光客数は年間≒2,000万人、毎日がお祭り状態で、迷宮迷路の街並はいくら散策しても飽きない場所です。一体ベネチア全体で何店舗あるのか、ジャンル別店舗情報アプリを開発すると旅の楽しさは倍増することでしょう。

 

遊びつくせないベネチアから、ミラノ・セントラル駅乗り換え、スイス・フィスプへ列車で向かいます。2010年ベネチア訪問の時はストライキで99%の電車が止まり、乗車予定のミラノ行だけが運行されたというラッキーな経験があったので、多少の不安を抱えながら早めにベネチア・サンタルチア駅に向かいました。運行掲示板を見ると予定通り運行されていたので一安心しました。欧州鉄道では車両中央付近にスーツケースラックが設置されている車両が多く、これも経験上のアイテムとして自分の座席と荷物が離れている場合、万が一を考えてスーツケースを結べるチェーンロックを持参しています。

 

 

resize1617resize1618resize1619ミラノ・セントラル駅での乗り換え時間は≒15分、乗り継ぎ電車の番線を探してどうにかイタリア国境を越えてスイス・フィスプに向かう列車に乗り込みました。車中でブログ更新の作業をしながら、暮れなずむ車窓を楽しみました。

 

resize1620resize1621resize1622スイス・フィスプの標高は≒700mで、まぶしい陽光に照らされ、半袖で過ごしたベネチアとはあきらかに気候は違っていました。老舗スイス郷土料理店でチーズ料理を堪能し、徒歩でホテルに向かったのですが、地図では予想できなかった上り坂が≒20分続きます。街灯もほとんど無い薄暗い道を迷うながら、やっとチェックインしました。こういうことが、自由旅行ならではの醍醐味であり楽しさの一つ、旅の目的は探索活動なのですから。

 

resize1625resize1624resize1623翌朝も雨が降っていましたがフィスプからマッターホルンの麓の街、ツェルマットへ向かいました。例によってホームを確認して予定通り9:57発の電車に乗り込みました。スイスは鉄道王国、日本並みに定刻運行がなされています。

 

resize1628resize1629resize1626ツェルマットのホテルにアーリーチェックインできるかは不明でしたが、地図とスマホを持ちながら、とりあえず予約してあるホテルへ行ってみました。ネット上でアパートメント・ホテルと記されていたとおり、レセプションはありません。

チェックイン方法が解らず、やっと別の場所に居る管理人に連絡が取れスーツケース4つを結び、ロビーに置いてマッターホルンを望む展望台へ向かうゴルナーグラート登山列車に乗りました。未だ小雨が降っていましたが、少しづつ明るくなってきたので期待をかけて標高3,100メートルの終点駅まで行ってみることにしました。

 

resize1637resize16362010年に山頂を訪れたのは晴天の7月初旬、半袖で十分でしたが今回はフリース+シェルを着て雨風をしのぎました。展望レストランで昼食を楽しみ、のんびりしていると、低くたれ込んでいた雲が時間と共に流され、雲の切れ間から日差しが漏れてきました。そしてついにモンテローザやブライトホルンの頂きが青空の中で輝き始めました。予報より半日早く天候が回復したのです、本当にラッキーな旅です。

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欧州で子ども主体の保育を学ぶ旅(終)29

2012年10月30日 火曜日

resize16402012秋、「欧州で子ども主体の保育を学ぶ旅」ブログも最終回を迎えました。イタリアの保育現場で学び、語り合い、楽しみ、とても充実した時間を過ごしました。レッジョでは保育理念と実践の研修を受けた証に修了証をいただきました。

 

resize1593resize1587日本各地から子ども主体の保育を学びたいと自発的に集まったツアー参加者、一人ひとりの保育を見つめ、変えていくきっかけになったことでしょう。成田から始まった旅はイタリア・ローマ、フィレンツェ、レッジョへと移動し、6日間一緒に過ごした参加者ご一行とは、レッジョ・エミリア駅でお別れの時がやってきました。我々男4人は東へ向かう電車でベネチアへ、ご一行は西へ向かう電車で世界のファッション発信地、ミラノを目指します。総勢十数人から男4人になり、一抹の感がありましたがいよいよ自分たちで考え判断し、行動する男旅の始まりです。

 

今回も移動手段は欧州鉄道(ユーレイル)を中心にして、数カ国縦断の旅になります。≒2カ月かけて訪問地候補のガイドブックを読み、ホテルと鉄道はインターネットで予約し諸準備をしました。行ってみたい所は山ほどあるのですが、訪問できる場所を絞り込んでいきました。十年までは不可能だったネットでの欧州鉄道の運行状況、所要時間とチケット予約購入ができるようになったので、旅行会社に頼らずに自由旅を設計できるようになりました。

 

resize1588resize1589resize1590まずは、レッジョ・エミリア駅からボローニャ・セントラル駅で乗り換えて、水の都ベネチア・サンタルチア駅へ向かいます。ボローニャセントラル駅もターミナルで、ベネチア行の電車が何番線から出発するのか駅舎を工事していた方に聞きながらホームを確認しました。4番線から発車したベネチア・サンタルチア駅行インターシティの車内はコンパートメント車両(空間区分)で、車両の端に廊下があり向かい合わせ3人掛けのドア付き6人部屋です。先に乗っていたスペイン人男性2人はとても気さくな方で、スペイン語の喋くりが止まりません。文脈は日本は素晴らしい国だという讃嘆語を重ねて述べていらっしゃいました。

 

resize1591resize1592イタリアの鉄道はストライキが多く定刻運行は稀な状況ですが、サンタルチア駅にはほぼ定刻どおり到着しました。広々とした駅前広場には太陽が燦々と照りつけ、陽気なベネチア滞在の始まりです。ネット予約したホテルは駅から徒歩5分の場所、ここはレセプションが日本で言う2階(1階)で、エレベーターがありませんでした(ここでも20歳代の保育士にスーツケースを運んでもらいました、毎回有難うございます)。

 

resize34863ベネチアは≒180もの島で形成されていますから橋の数は≒400、海面ぎりぎりに路面がある場所も多いので、ゴンドラ船などの運航上、橋はアーチ型になっています。ある橋を渡ろうとしたとき、車椅子を持ち上げるのに苦労していた方を見かけました。すかさず若男3人が車椅子を抱えてアーチ橋を渡り、ベネチアでの「一日一善」、思い出に残るシーンです。

 

 

 

迷路の街並みをさまよいながら、サンマルコ広場まで歩くことにしました。道中は色鮮やかなディスプレイの店舗がいたるところにあるので、4人それぞれの探索活動が早速始まりました。子どもが自分の興味のある遊びのゾーンを選ぶようなものです。10月後半になるとアフリカ大陸からの風、シロッコの影響で海面上昇が発生し、海抜0メートルのベネチアはアクアアルタ(水没)する日があります。

resize34861resize34859resize34858resize34857resize34860resize1611resize1609resize1594resize1595resize1596resize1598resize1599resize1600resize1603resize1606

 

 

 

 

 

   

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欧州で子ども主体の保育を学ぶ旅28

2012年10月29日 月曜日

resize1581ピストイアとレッジョ・エミリアを訪問して、その保育理念と実践を学んで感じたことは、

 

④保育者は「子どもに答えを与えない」という考え方を基本にしていることです。答えを教えるのは簡単なことかもしれませんが、教え・与え続けていると子どもはいつまでも、どこまでも答えを求めにきます。やってあげることが好きな保育者はこの仕掛けに気付かず、自分のことを頼りにしてもらって嬉しいと感情的に思うのでしょう。このように感じている人や時には、保育者は自分が何のために配置されているのか、再考することが賢明です。保育者は子どもの代わりをしてはいけないのです。

 

答えを与えないこと、答えは子ども自身が自ら導き出すものです。課題は子どもの中にあるのですから、その最善の答えは課題を抱えている人にしか導き出せないのです。レッジョで行っている保育時間中のやり取りを録音して後日振り返ることは、とても有効な方法だと思います。後で振り返ると保育者のほとんどは「あの時、口出しせずにいればどんなに良かったか」と感じ、赤面することがレッジョでも沢山あるそうです。

 

これは保育者同士にも当てはまる事柄で、相手にはヒントを与えるだけで良い場面が多々あります。園の理念から考えてみるとどのように取り組んだらよいか、というヒントが鍵となって自らの力で探索活動が始まるのです。相手の考えを聞いてからどんなヒントを与えるか、答えは相手の中にあるので、たとえ自分の意に沿わない答えであっても理念の範囲内であれば良いのです。人は相手の話を聞きながら、すでに自分なりの答えを考えていることが多いので、よほど気をつけなければならないことだと思います。

 

子ども一人ひとりは自分の個人的な興味について学ぶ権利があります。ピストアもレッジョも、子どもは簡単なことから難しいことへと進んでいくのではなく、年齢で限定せずに子どもに全ての保育素材を提供することを大切にしています。そして最も特徴的だったのは、子どもの発達に応じた玩具や備品を用意するという発想ではなく、興味を引くようなモノも用意しておいて、その中から子どもが発達に応じて、選んで遊ぶという考え方です。とかく日本では何歳児用の○○という考え方が主流ですが、光のアトリエは同じ素材で乳幼児から大人まで楽しく遊び、学べるのですから何歳用という発想も刷り込みなのかもしれません。同じものを見聞きしても、人それぞれに感じ取るものは違って良いのですから、遊びの展開も相手任せということなのでしょう。

 

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Posted in 前園長(11代)須田 益朗の実践ブログ

欧州で子ども主体の保育を学ぶ旅27

2012年10月26日 金曜日

resize34846今回のイタリア2市で学んだ保育理念・実践で感じたことは、

 

③子どもの人権・権利を最大限保障し、子どもの持ち味を引き出す保育を展開している点です。その取り組みの一例として、子ども主体の保育を高めるために子どもと保育者だけという狭い発想でなく、たとえば芸術家などの秀でた感性の持ち主を保育現場へ配置しているのです。それを特化させたのがレッジョのアトリエスタです。

 

保育者は子どもとの距離感が近くなる傾向にありますから、欧州の保育養成校で学ぶ「保育者はいかに子どもから離れるか」は常に肝に銘じる基本スタンスです。保育者と子どもが煮詰まらないためにも、たとえばレッジョのアトリエスタのような存在は保育者が自分の保育を見つめる、深める、見直す、ためにとても効果的です。アトリエスタはその分野の専門性を有したアーティストですから、そのことが好きでたまらない人です。好きだからその道を極められるのです。

 

これは子どもが遊びに熱中している時と似ていますから、子どもの気持ちや感覚が手に取るように理解できる人なのでしょう。一般通念では、どうせ無理とか、なんでそんなことをやるのか理解できない、などということを子どもは一生懸命集中して探索活動を行います。それを理解してくれる、理解しようとする人がそばにいることは子どもが自分の存在感を確認できる「鏡」なのです。時に鏡を確認しながら、さらなる探索活動を自らの力で行うことを保障されている環境は、歴史に残る偉人の周辺環境と重なるものがあります。 

 

偉人は、自ら興味を持った事柄の探索活動をしていく中で、思いもよらぬ大発見・大発明をした人々です。そのことへの探求心、探索活動を諦めなかった人であり、周りの人々がそれを見守ってくれた人的環境や物的環境があったから諦めずにすみ、やがて偉人になれたのです。偉人伝は興味を持ったことをけっして諦めなかった人々の記録ですから、特に幼い時の読むと効果的です。凡人は環境に影響されて、諦めてしまうので偉人になれないだけのことです。全員が様々な可能性を秘めているのですから、子どもに対しても大人に対しても、肯定的な関係で探索活動を認めていたいものです。

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Posted in 前園長(11代)須田 益朗の実践ブログ

欧州で子ども主体の保育を学ぶ旅26

2012年10月25日 木曜日

P1000470今回のイタリア2市で学んだ保育理念・実践で感じたことは、

 

②「保育・教育は子どもの将来のためのものではなく、今現在を生きている子どもの存在が最も素晴らしく、それを大切にすることが保育・教育である」という基本的な考え方です。いわゆる日本で一般的に行われている育児や保育は、子どもは今から発達し成長して大人になっていく存在なのだから、幼い時期は準備期間として捉えて大人が育児や保育を提供する、という発想でしょう。この点が180度違うので、両者の実践は全く異なるものになっていきます。

子どもの可能性は万国共通なのに、大人の考え方とそれに伴う関わり方が真逆ほど違うのですから、子どもの発達にどれだけ大きな影響と差が出てくるかは歴然でしょう。

 

「子どもは今から発達し成長して大人になっていく存在なのだから、幼い時期は準備期間として捉えて大人が育児や保育を提供する」という考え方は、大人目線から子どもを見ているといえます。では、この見方を大人同士に置き換えてみるとどうなるでしょうか。たとえば、20歳の人は30歳になるための準備期間、50歳の人は60歳還暦を迎えるための準備期間…」となり、いつまで経っても「今この瞬間の相手が最高の存在だから大切にする」という見方ではないようです。

 

そのように見られているとどんな気分でしょうか、自分は未熟な存在、全肯定されていない存在だと感じ、おそらく良い気分ではないでしょう。このように子どもを準備期間と捉えて接する考え方だと、子どもは満たされた気分ではなく、常に次の発達を遂げるように急がされている気分になるのでしょう。明日の自分ではなく、今の自分を認めて欲しいと思うでしょう。これはこの時期に最も大切な自己肯定感が醸成されにくい関わり方といえるます。

 

「保育・教育は子どもの将来のためのものではなく、今現在を生きている子どもの存在が最も素晴らしく、それを大切にすることが保育・教育である」は、『いのち』という存在をどう捉えているかともいえます。『いのち』は今の一瞬一瞬を生かされて成り立っているのですから、この世に存在している人間、動植物、地球環境で「明日」を保障されているモノは何一つ無いのです。このように考えてみても、「子どもは大人になるための準備期間」という考え方は大人になれるという保障をされていないのに、準備するというのは成り立たないことです。無論、保育者は保育のプロとして子どもの発達過程を熟知したうえで、今のその子どもの発達過程にピッタリの日々の保育を行っていくことになります。

 

今の一瞬一瞬を大切にすることは、子どもと大人双方の権利を保障する保育になっていきますから、「大人主体・大人主導の保育は存在しない」というのが保育先進諸国共通の理念です。その考え方の大本は、「全ての子どもは自発的に学び、自ら成長しようという可能性を持っている」という絶対的な考え方です。「元来子どもは自発的に学ぶ力を持って生まれてきている、生まれてきてからその力を学ぶものではない」という捉え方です。

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欧州で子ども主体の保育を学ぶ旅25

2012年10月24日 水曜日

P1000976今回訪問したイタリア2市の保育環境視察研修は充実した内容でした。レッジョはその名を世界にとどろかせていますが、ピストイアの環境設定も非常にクウォリティが高く、目を見張るものがありました。

今回の研修旅行ではピストイアの3~5歳児を見学できなかったので、0~2歳児の園、3~5歳児の園、そして小学校へのアプローチを学んでみたいと思います。白川町との姉妹都市交流をとおして日本と繋がりが深いという点もピストイアの好感度が高い要素の一つです。

 

ピストイアとレッジョ・エミリアを訪問して、その保育理念と実践を学んで感じたことは、

①一般的に保護者は園に対して、自分の子どもにどんな保育をしてくれるのかどんなサービスを提供してくれるか、を求めますがレッジョでは保護者に次のように問います。これは大変重要なポイントです。レッジョでは保護者に対して「あなたの子どもは地域のために何ができますか、貢献できますか」を問うのです。子どもの基本的人権を本当の意味で保障しつつ、社会の構成員としての義務も果たしていくという理念と実践です。

 

この考え方を伺って、育子園に通っている0歳児ができる地域・社会貢献を考えてみると、たとえば園の周辺に散歩へ出かけるだけで地域の方々が笑顔になり、話しかけてくださるのです。これは0歳児がすでに行っている素晴らしい貢献、私造語ですが『存在貢献』とでもいうべきもので、その人がそこに居るだけで周りの人々が幸せになる最高の貢献、布施行といえます。

 

さらに6歳児までの間にも一人ひとりの発達に応じた自発的な言動で、地域社会を活性化する取り組みができるはずです。そうすることによって子どもは自分のことを地域・社会が大切な一員として認めてくれて、その存在にほどよい期待をかけていると感じることでしょう。おおむね3歳頃までにその基礎ができるとされている、『自己肯定感(自分を絶対的に愛してくれる親がいる、周りの人がいる、自分は大切な存在だと思える)』は親を基として周りの人々の人的関係性によって醸成されるのです。

 

その関係性に加えて、地域・社会という公共的関係からも、子どもの存在を大切な構成員として捉えるようになると、親と周りの人々との関係における狭義の『自己肯定感』と、地域・社会との関係における『地域・社会肯定感』が相乗効果となって力強いダブルスパイラルができていくのでしょう。たとえば公共資産や風習・慣習などを損壊する自己中心的な言動も、地域・社会の構成員として0歳児を大切な存在として捉えてこなかった反省ではないでしょうか。地域・社会から『自国肯定感』へ拡がり、『地球肯定感』へ高まっていくと真の平和環境が見えてくるのでしょう。

 

たとえばレッジョで行っている取り組みのひとつ、地域にある商店の看板作りを子どもが行うなども好例でしょう。

人は人から信じられ任されると、底力を発揮きるのです。

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Posted in 前園長(11代)須田 益朗の実践ブログ

欧州で子ども主体の保育を学ぶ旅24

2012年10月23日 火曜日

今年も新宿せいが保育園の藤森園長先生主催、「ドイツ・ミュンヘン保育環境視察ツアー」が始まりました。育子園からも3年連続で職員が参加していますが、ミュンヘンに無事到着した様子をブログに掲載してくれました。毎年限定20人のツアーには日本全国から、子ども主体の保育を学びたい保育関係者からの申し込みが多く、今年もキャンセル待ちがでたそうです。

 

では、P1000720レッジョ研修の質問続編です。

 

質問⑩:人には相性があります。もしも相性が合わない子どもと保育者の場合、3~5歳児の3年間を一緒に過ごすのは難しいのではないですか。

回答⑩:3年間担当する意味は、担任が毎年が変わると子どもと保護者との信頼関係をゼロから構築する毎年莫大なエネルギーを注ぐことになります。

担当する26人の子どもと26家族と信頼関係を築くのは大変です、毎年変わっているとそれを3回行わなければならないのですから、お互いにとってあまり良いことではありません。保育は担任だけで行うのではありません、他の保育者やアトリエスタ、地域の人々など多くの関わりの中で発達を遂げていくのです。イタリアの学校では原則として卒業するまで同じ教師が担当しています。レッジョの方式では、3~5歳児は年齢別クラスで、国立幼稚園は異年齢です。

 

質問⑪:保育中のドキュメントの記録と活用について教えてください。

回答⑪:ドキュメントは今までやったことの資料、子どもたちの発達や作品群で、書き留めたり、ビデオ録画、写真撮影をしてとらえています。そうすることで保育者がインスピレーションを広げることができます。保育者の資質向上に役立ち、展示することで他者に見てもらうことで、自分の主観で記入したモノを客観的に見る気持ちになれることです。自分の主観を他者に見せることで、どのように子どもを観察しているかをオープンにすることです。批判や賛同をもらうことでコミュニケーションが生まれ、自分が向上していけるのです。

 

質問⑫:ユーロ危機の中で保育にかける予算も限りがあると思いますがレッジョではどのような状態ですか。

回答⑫:レッジョの地域も経済的に大変ですが社会福祉に力を入れています。近々、国からの補助金が打ち切られそうです。レッジョでも昨年からリストラを始めましたが、ボローニャ、フィレンツェはもっと大変だと聞いています。そんな状態ですからアトリエスタは不要なものだという声もあるかもしれませんが、廃止することは保育理念に反することになるので廃止しません。費用をかけなければならないところにはちゃんと手当てをします。

労働時間も36時間労働から25時間へ短縮されそうですから、そうなると良い保育はできません。1980年代の経済危機もどうにか乗り切りましたが、保育の質を下げることはできません。子どもたちは私たちの将来なので投資していきます。

 

質問⑬:アトリエスタのどのように選抜しているのですか。音楽関係者の割合はどの程度ですか。

回答⑬:レッジョアプローチを学び理解した人がコンクールに応募して、その中から選ばれます。音楽関係者は少数です。市民に見せるイベントには有効な人材です。

 

質問⑭:子どもたちが作った作品群はどうのようにしているのですか。

回答⑭:半分は家庭に持ち帰り、園にも半分保管します。園で過ごした思い出として大切に共有していきたいものです。その時、その瞬間に子どもが学んだということを重要ししています。

(文責:園長)

 

この日は研修が終わってから徒歩20分の場所にある「Scola Materna Fondazione Campi Soncini」園を見学しました。1923年にキリスト教を基に創設され、現在は職員と地域住民で運営している自主独立精神の高い園です。日本人も2人通っているそうで、南イタリアからの移住者が多いレッジョを象徴している多民族の子どもが利用している園です。異民族、異文化を受け入れる心の広さと余裕を持った創設者の意思を引き継ぎながら、時代の変化にも対応しているのです。使用している備品・玩具類は年季の入ったモノが多く、質素倹約の自主運営環境の中で工夫して保育を行っていました。

 

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欧州で子ども主体の保育を学ぶ旅23

2012年10月22日 月曜日

レッジョ研修の質問時間続編です。

 

質問⑥:自発的に活動しない子どもに対する保育者の関わりはどうしていますか。

回答⑥:保育者は子どもの興味の「カギ」を見つけることをおこないます。とにかく子どもの意見を子ども目線で聴き、大人が高い目線で質問するのではなく、その子の気持ちを得るために聴くのです。子どもは自分で興味のあるものを見つけられないこともあります。ブラブラしているうちに、他の子が遊んでいるのを見て、その子がひらめくこともあります。

周りを見ているという行為もその子の興味を引くものを探している時間です。5歳には5歳の時間観念があり、2年間一緒に過ごした子どもたちがその日何をするか、ケファーレで意見を出し合います。

以前こんなエピソードがありました。ある男の子がサッカー選手を粘土で作っていたのを見て、「みんなで作ってみたら楽しいのじゃない、22人作ってサッカーの試合をしてみよう」と提案すると、その日には行わず、次の日に彼は「サッカーチームを作ろう」と発言しました。保育者が押し付けるのではなく、ネゴシエーション、取引し子どもにも責任を持たせたのです。

子どもの自発性を引き出すのは、まずやる気があって、それを引き出していくことです。子どもと大人はお互いに責任を持つことです。葉っぱを集める時に、枯れた葉っぱを集めてみようと提案すると、季節の移り変わりを感じたりするきっかけになるのです。大人が本当に観察していると子どもを理解できるのです。子どもは大人のことをよく見て観察しています。

 

質問⑦:外遊びと室内の保育環境についてどのように考えていますか。

回答⑦:イタリアは室内を重視しています。庭が狭い園が多いので、外と中とのバランスを取っていくのは大切です。イタリア人は暑がりで寒がりですから、温度変化が少ない石造りの建物ですから室内で過ごすほうが快適です。レッジョでも土地の確保ができれば、外遊びが思う存分できるようにしたいと考えています。室内も園庭も全部が園ですから、藤棚を観察したら室内でその絵を書いたり、葉っぱを室内のライト机に置いて観察したりすることで、室内でも外遊びをすることができるのです。

 

P1000927質問⑧:子ども一人ひとりを観察するドキュメンテーションを26人の子ども全員にすることはできるのでしょうか。

回答⑧:一日に全員は無理です。3年間でとらえています。例えばいきなり8人の子どものドキュメントは作成できませんが、経験を重ねることでだんだんと8人分作成できるようになっていくのでしょう。プロジェクトとプログラムの違いを理解することです。子どもが何をしているかよく観察することはプロジェクトといいます。ドキュメントはそれを活性化することができます。

 

質問⑨:民主主義、人権を保障した上で成立している保育実践、子どもに責任を与えることの難しさがあると思います。子ども同士のトラブルに対する保育者の対応はどうしていますか。

回答⑨:コミュニティは全員が参加しなければ成り立ちません。大人の社会と同じで、グループである限りは、ディスカッションが大事です。グループだからケンカに発展することはいかがなモノでしょうか。トラぶっている理由は保育者が聴いてあげます。いわゆるキレる子どももいます。ヒートアップを下げるように場所を変えることもあります。子どもにも感情があり、モラルを理解できる日が来るのでしょう。激しい感情や暴力をふるう子どもに対しては、グループの意味を伝え理解し合うことです。

(文責:園長)

 

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欧州で子ども主体の保育を学ぶ旅22

2012年10月19日 金曜日

レッジョ研修の続編です。

resize34607一日の講義が終了しました。同時通訳を介しながらランチタイムを挟んで延6時間様々な学びを得ました。一日の学びを深めるために参加者からの質問時間が始まりました。

 

質問①:全ての年齢の子どもに玩具等の環境を平等に与えるということと、年齢別保育との整合性について再度教えてください。

回答①:良い質問です。私たちは注意しなければいけないのです。それは子どもたちの学習の仕方についてです。その盲点は人生が複雑化していくという点です。子どもの発達過程は無視できませんが、年齢で固定的に考えないこと、光のインスタレーションでたくさんのことを気づくでしょう。生後6か月から大学生までが同じ素材でそれぞれの発達過程で楽しめるものです。日本の文化は素敵です、見た目重視、外見の環境を整えることです。

 

質問②:保育者は日常のことを大切に考えて保育をするが、アトリエスタは非日常的なことを考えていると思いますが、両者はどのように融合しているのですか。

回答②:保育者にささやく、助言を与えてあげるような存在がアトリエスタです。大切なのはいつも主役であることです。

 

質問③:子どもに対する保育者の言葉がけはどのタイミングで行っていますか。

回答③:まず、自由と見離すという考え方があります。自由に子どもをさせるということであって助けてあげないといけません。保育者は子ども自身の代わりをしてはいけません。答えを与えないこと、子どもに答えを考えてもらうように関わります。保育時間中を録音して後日振り返ることはとても有効です。あとで振り返ると保育者は「あの時、話さなければよかった」と感じることが沢山あることに気付くのです。

 

質問④:素材を乱暴に扱ったり、周囲との協調性に欠ける子どもはいませんか。

回答④:始め方が大切です。スタートは少しの素材を使ってみて様子を観察することです。各種コーナーを設けたとして、初めの4カ月は規律を学ぶこと、民主主義のルールを学ぶ時期です。保育者がルールを教えなくても子ども同士がルールを設定していきます。子ども同士の共同的学びが構築されます。乱暴に扱ったりほかの子どもの邪魔をする子どもは、その素材はみんなとの共有物して使うということの意味をその子に理解させていなかったからでしょう。

 

質問⑤:レッジョの基本的考えかたは、子ども同士の共同的学びを引出し、見守ることですか。

回答⑤:詰め込むのではなく、引き出すことを大切にしています。26人の3歳児はそのままにしておいても自発的には学び始めません。子どもの興味を引き出す取り組みとして、アトリエを設定しています。子どもがその日発見したことを発表し合います。

(文責:園長)

 

 

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欧州で子ども主体の保育を学ぶ旅21

2012年10月18日 木曜日

レッジョ研修の続編です。

P10008122006年にレッジョの実践を録画したビデオがあります。日本でも販売していると聞いていますが、園に2年間通っていた5歳児の子どもたちの10月26日の様子です。レッジョでは3年間同じ保育者が担当します。最初に保護者に言うことは、家庭でも起こり得る「怪我」は園でもあり得るんですということを伝えます。

ハサミで怪我をしたとしても、園の責任であると同時に保護者の責任でもあると考えています。

 

過去を見ることによって、新しい発見ができます。ビデオは大切なモノで、ビデオが無ければ、レッジョの保育を外部に見てもらうことはできません。子どもたちの造形作品は「子どもたちから園や学校へのプレゼント」というとらえ方です。ディアナプレスクールには78人の子どもたちがいます。担当者だけが子どもに接するのではなく皆で関わっています。

 

照明を薄暗くして子どもを興奮させないことを研究して空間設定を行っています。パソコンを子どもたちに使えるようにしています。たとえば子ども自身がデジカメで撮影した画像をディスプレイに写して加工することもあります。子どもにも自主責任があると考えていますから、保育者が全員の子どもを見切れているのではないのです。

楽観主義だと思われるでしょうが、「子どもと一緒に危険を学びたい」と考えています。保育者が子どもと子どもの家族を信じていると、保育者のことを信じてくれます。信頼関係を築くことが大切です。

 

今年5月に日本の保育園を訪問したとき、異年齢保育で大きい子どもが小さい子どもの面倒を見ていましたが、大きい子どもの責任が重いのでは、小さい子どもは依存心が強くなるのではないかと感じましたが、異年齢という方式も興味深いと思います。

 

保育者は子どもの導線観察に基づいた、備品配置などを考えることです。子どもは何もない空間だと走り回ります。アトリエに子どもが集中するので複数作りました。何も展示されていない壁は園の中には存在しません。子どもが何に出会うか、大人がするべき仕事はそれです。子どもは今日は何に出会いたいだろうというイマジネーションを大人が描けるかどうかです。

 

子どもと空間の関係という書籍がありますが、日本人の空間デザイナーとコラボしてた様子が載っています。子どもたちが家の中のままごとセットを全部出してしまう子どもたち、保育者は毎晩それを元に戻すのが仕事になりました。それを観察していた保育者たちが話し合って、家がいらないのではないかということになり、ピクニックバスケットにままごと用具を入れてみたら子どもたちはそれを持って出かけて遊ぶという展開になり、問題解決できたというエピソードがあります。(文責:園長)

 

お話を伺って、子どもの言動を観察して、ままごとセットをピクニックバスケットに入れてみようと発想し実践してみると、見事に子どもが望んでいる環境になったというエピソードは、大人の固定観念を捨てて考えてみる柔らかさを学べました。

Posted in 前園長(11代)須田 益朗の実践ブログ

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