人は何故、旅に出るのか
2012年08月01日 水曜日
中央公論新社の「夫婦で世界一周しよう ♪♪ タビロック」という書籍、ブックカバーには地球君が笑って歩き、インドのタージマハルをバックにおどけた笑顔とパフォーマンスの若い夫婦が写真に映っています。
元気はつらつで夫婦二人で世界旅をする愉快な書籍だと思ったのですが、実は2011年10月夫婦共(夫:元飲食店経営管理職36歳、妻:元医療従事30歳)に訪問38ヶ国目のボリビアでマラリア感染(アフリカ旅後)し亡くなったです。その訃報を知った友人は親族からあることを聞かされました。
「物語になるような、楽しいことも苦しいこともたくさん経験して人生を送りたい」と家族に話し、日ごろから書き留めていたノートに“夢”という項目に、「本を出版すること」と記されていたのだそうです。
2010年2月7日に日本を旅立ち、夫婦2人で歩いた旅の軌跡、短くも燃え尽きた2人の人生を絶対に多くに人に知ってほしいと心に決めた友人がこの書籍を出版したのです。
日本から中国⇒マカオ⇒ベトナム⇒タイ⇒マレーシア… エジプト⇒スーダン⇒エチオピア…と、楽しそうに体調も維持しながら旅を続ける夫婦のブログと写真が約300ページにわたって載っています。38ヶ国中、私が旅した11ヶ国も含まれています。
昨年旅したマレーシア・ペナン島、一昨年のドイツ・ミュンヘン、3年前のインド、5年前のアフリカ・エチオピア…。読んでいると各国の思い出がリアルに蘇えってきます。たとえばエチオピアのインジェラ(テフ粉を水ときし発行させクレープ状にして焼いたモノ)は「濡れ雑巾」を放置したような悪臭と甘酸っぱい味が口の中に浮かんできました。
また、ヨーロッパでは一人でドイツ・ミュンヘンからオランダ・アムステルダム行き国際列車に乗り込んだのですが、途中車両故障でアムステルダムへたどり着けず、急きょデュッセルドルフの安宿を数件歩き、値引き交渉した場面など…。
この書籍の主人公は、旅に出たくなる理由をこう述べています。
…今日は、『深夜特急』を読んで、たっぷりと旅の世界へとつかってしまいました。そして、今までの自分の旅の記憶がどんどん蘇り、私は何で旅がしたくなるのだろうと考えました。そして旅のことを思い出してみると、出会ったことの人やその人と会話した内容ばかり。すごく綺麗な景色とか、世界遺産とか、美味しかった料理、もちろん旅の醍醐味です。
でもそれよりも、言葉も文化も全く違う人と、心が通じ合う瞬間の喜びみたいなものが、忘れられないんだと思います。それは、なんか、自分はこの広い地球に、しっかりと生きているんだ!って思えるような感覚です。
そして、また異国の人と触れ合いたくなって、旅に出てしまうのです。
だから、旅のスタイルはパッケージツアーではなく、個人旅行だし、泊まるところも簡単に予約チェックインできるホテルではなく、あーだこーだ交渉すること、それがワクワクするのです…。
この感覚は本当によく解ります。最終頁には若夫婦が満面の笑顔で、A3サイズの紙を二人で持っている写真が載っています。そこには力強い字で、『一生青春! 次は子どもと一緒に、世界二周目! タビロック』。
この夫婦のことを感じながら、私も今夏3ヶ国旅(通算22か国目)に家族と出かけています。
Posted in 前園長(11代)須田 益朗の実践ブログ