子どもを丸ごと認められる人から出てくるのは笑顔
2012年07月13日 金曜日
児童精神科医の佐々木正美先生は、保育園、幼稚園、学校、児童相談所、養護施設、保健所など40年以上にわたって子どもの臨床にたずさわっていらっしゃいます。特筆すべきは保育の現場で働く保育士や幼稚園教諭との勉強会を、30年以上つづけられていることです。さまざまな保育現場での保育の質の向上のために行われている取り組み、子ども達の現場を知っている精神科医は日本では希有でしょう。
佐々木先生は親の言うことを聞かない子どもはいません、実は「その親が子どもの言うことを聞いてこなかったか」を子どもが教えてくれているのです。子どもが甘えてきたら親は十分に甘えさせて気持ちを受け止めてあげることが幼少期には不可欠で、子どもの思いを満たしてあげることが成長したときに人の話を聞き入れられるようになり、社会のルールも自然と受け入れられるのです。子どもは発達過程において、自分の全存在を全受容される経験が不可欠です。親の思いは後にして、子どもの思いを受け止めることが先、子どもは思いを聞いてもらうと人を信じる力がつき、自分を信じる力も育っていくのです。子どもが親に甘えるのは信頼しているからこそであり、その信頼が基礎となって自己肯定感が高まり、自立・自律へとつながっていく、とおっしゃっています。
佐々木先生は、非行や犯罪を犯してしまった数多くの少年と面会してきた経験から、ほとんどが幼少期に親に甘えを受け止めてもらえずに、親の要求を押し付けられて育った子ども達だそうです。親の要求は子どもにとってどのように感じるかというと、「現状のあなたに満足していません」という拒絶反応や軌道修正要求のメッセージとして幼い子どもの心に毎日のように重くのしかかっているというのです。
京都大学大学院の木原雅子先生が高校生対象のアンケートで子どもの甘えと年少の性体験の関連を分析しています。アンケートに「あなたは親から大切に育てられましたか」、「あなたは性関係を持ったことがありますか」という設問を集計したところ、大事に育てられなかったと回答し性体験があると回答した割合は、大切に育てられた子どもの≒5倍だったというのです。親に十分甘えさせてもらえなかったという乏しさが、精神的にも肉体的、性知識的に未熟な段階で不健全な性体験行動に駆られ、その体験の中に過去に経験できなかった受容と甘えを求めようとしているのです。
子どもは思ったり体感したことをそのまま表現します。率直に感じたことを言っただけなのに、否定される体験を繰り返していると本当のことを言わなくなったり、嘘をつくようになったりします。
関西大学講師の原坂一郎先生がおっしゃっている、「子どもを丸ごと認められる人から出てくるのは笑顔。否定する人から出てくるのは文句」を心において子どもと日々過ごしていきたいものです。
Posted in 前園長(11代)須田 益朗の実践ブログ