【福島の保育園レポート】屋外で30分しか遊べない子ども達
2012年06月20日 水曜日
杉並区私立保育園連盟の園長視察研修で、福島市を訪れました。3.11以前と以後の子ども達を取り巻く保育環境などを現地を訪問して生の保育関係者からお伺いすることは、同じ保育者として重要なことと考え今回の視察研修が計画されました。
福島駅から車で20分にある、「あすなろ保育園」と「さくら保育園」の見学を行いました。あすなろ保育園は日本のナイチンゲールと称された、瓜生岩子先生が創設した園です。悲運の少女時代を経て、後半生を社会運動に捧げ、ある人をして菩薩の化身とも称讃された慈善事業家瓜生岩子先生は、2百余名の孤児の母であり、混乱期の社会福祉運動の先駆けとして、女性初の藍綬褒章を受賞されました。園内には子どもに囲まれた先生の銅像が飾られ、創設者の理念と実践を後世に継承していくことを象徴していました。
1園目の園長先生から3.11以降の子どもを取り巻く環境悪化についてお話を伺うことができました。
園庭の土を15㎝ほど全面撤去しましたが、その土は敷地外に持ち出せないので地中深く穴を掘り、シートを張った中に表土を入れて埋めてあります。行政は一応、仮置き場と言っていますがこの先どうなるか、半永久的にこのままの状態になるのではと懸念しています。園内にはふんだんに樹木や裏山があって子ども達は自然の中で思う存分過ごせる環境でしたが、山の中まで全部は除染できないので子ども達は一切入れなくなってしまいました。
園庭に合った様々な遊具も除染してみましたが、線量が一向に下がらないのでやむを得ずすべて撤去し新規にコンビネーション遊具を買い換えることなってしましました。数百万円の遊具代は今のところ園で支払っていますが、行政も東電も支払ってくれる様子はありませんが、粘り強く訴えてきたいと考えています。
外遊びは30分間だけに制限され、さらには土の上は歩かないようにゴムチップの上だけ歩けるようにしてあります。沢山の花や野菜も栽培していましたが、今は室内でキュウリ等を栽培せざるを得なくなっています。一本のキュウリを何人もの子どもでもぎ取るほど少ない量しか栽培できなくなってしまいました。園庭にはドラム缶サイズの放射線量測定器が設置されリアルタイムで線量が表示されています。
現在では0.3μシーベルト程度に下がってきましたがこの先どうなるのかは未知数です。プール遊びも屋外ではできないので、屋外に部屋を作ってプールを設置する予定ですが、この費用も円の持ち出しになってしまうかもしれません。
給食材料も保護者の要望で県外産を使用しているのですが、入園してくる方が農家の場合はつらい気持ちで一杯になります。いつまでこの状態が続くのか、生産者の方々の気持ちを思うと複雑な気持ちです。(文責:園長)
園長先生のお話と園内の見学を行って感じたことは、3.11以前のあの生活に戻れるのはいつになるかわからない不安と不満の中で目の前の保育を丁寧に行っていらっしゃるのです。子どもの将来に対してもどのような影響があるか未知数だからこそ、法人の持ち出しで除染や遊具等の費用を捻出している現状を目の当たりにすると、誰がどのように責任の果し方の道筋さえ見えない状態です。
職員の皆さんは気丈に明るくふるまって保育を行っていましたが、一人ひとりの方々のご家庭やご苦労は計り知れません。現地の保育現場のことを杉並そして東京の保育者に伝えていくことが役目だと思いました。
Posted in 前園長(11代)須田 益朗の実践ブログ