【福島の保育園レポート】高村光太郎、智恵子が佇んだ宿
2012年06月19日 火曜日
杉並私立園長会恒例の保育園視察研修に参加しました。毎年1泊2日で出かけていましたが、昨年は3.11の関係で自粛して日帰りで行いました。さて今年度はどうするかと16園で話し合い、東北地方の保育園を訪ねようということになりました。3.11以降激変してしまった福島の保育環境を現地に出向いて学ぶことは、同じ保育関係者として至極当然のことだと思います。マスコミ報道がやや下火になってきた時だからこそ、訪問して生の声を聴かせていただきたいと思ったのです。
訪問先は福島市内にある、「あすなろ保育園」と「さくら保育園」を選定してくださったので2園に決定しました。
参加園長は福島駅現地集合でしたが、待ち合わせ時刻の5分前には全員集合、タクシーで宿泊場所へ移動しました。福島駅から≒50分のところにある「秘湯 不動湯温泉」が今回の宿です。ある園長先生が以前に訪れたことがある山奥の一軒宿でトレッキング客も多く訪れる知る人ぞ知る宿だそうです。車は山道を走り、宿の手前2㎞からは舗装道路ではなく凸凹の土道になり、路肩を気にしながら慎重に進んでいきました。この山道は不動湯温泉で行き止まりですからこの温泉のためにあるようなものです。
やっと宿の近くまで到着しましたが、車で玄関まで行くことはできません。小さな駐車場から歩いて道幅1mもない山道、階段を歩いた先にやっと古風な一軒家が見えてきました、南斜面の崖にしがみつくように建てられた建物は大正8年、今から93年前のもので、3.11による建物への影響はほとんど無かったそうです。女将さんが見せてくれた古い宿帳には、東京市駒込から訪れた彫刻家、高村光太郎と智恵子夫妻の署名がしっかりと残っていました。夫婦が宿泊した十六番の部屋は当時のまま残されています。くしくも6月17日のTBSラジオで智恵子抄の朗読を聞く機会に恵まれたことにご縁を感じたところです。
トイレは共同で風呂場への道のりは玄関から階段を下ること数十m、木造の外階段は急こう配で床面がゆがんでいてスリッパを履いたままだと転びそうな造りでした。バリアフリーの真逆の造りはそれを承知で訪れる客だからバリアアリーを「趣き、風情」と感じるのでしょう。湯場はこれ以上のシンプルはないもので、六畳程度の部屋に2畳の湯船があるだけで蛇口もシャワーもありません。さらに野天風呂までは屋外階段を下って、滝音が豪快な川沿いにたどり着きました。周りは深い緑に囲まれた野天で森林浴をしながらゆっくりと過ごせました。
夕食は地元の川魚や山菜がメインで、90年前から受け継がれた献立を味わいました。食事後も全員が集まってトータル5時間、子どもの育ちや園運営などを語り合いコミュニケーションを深めました。特に今年から園長になられた3人の先生にとっても同じ杉並の保育仲間という安心感が生まれたようです。
Posted in 前園長(11代)須田 益朗の実践ブログ