見送られた「子ども・子育て新システム」関連56法案
2012年06月13日 水曜日
今国会で、「子ども・子育て新システム」関連56本の法案が審議されていますが、3党協議でやっと総合こども園が見送られました。導入されている認定こども園を存続させる方向になったようです。介護保険法システムを子どもに当てはめようとしている新システム案、介護保険法は40歳以上の保険料で賄われていますが、新システムは「税」で賄うことになって2015年に消費税10%増税分から7,000億円、さらに10年後に1兆円を見込んでいますが受け入れられなかったという結果になったようです。
見送りとなったシステム案を振り返ってみると、2018年をめどに現在の保育園を、「総合こども園」に完全移行し、幼稚園は全てが移行しなくてよいこと(私学助成存続あり)を想定しています。先進諸国の社会保障制度と比べると、日本は子どもに対する給付が極端に低いのでそれを改善できると見込んでいました。
地域子育て支援拠点事業に地域の子育て資源に精通した、「子育て支援コーディネーター」を配置することも予算化されていますが、園と保護者の直接契約になると保育の必要性の認定(短時間と長時間の認定、ただし3歳児以上の子どもの短・長時間の区別はしない全員長時間)を受けた保護者は各保育園を回って入園申し込みをするとされていました。
待機児童が多い地域などで、入園希望者が定員を超えた場合は、優先利用に配慮しつつ保育の必要性に応じて選定することになります。HIV感染、新型肝炎等を患っている申込者を正当な理由なく拒否することはできません。また、虐待や障害のある子どもは市区町村があっせんするとされていました。
総合こども園は学校教育・保育および家庭における養育支援を一体的に提供する施設とされ、3歳児以上は4時間程度の教育時間を保障し、その後は保護者の就業時間等に応じて保育を必要とする子どもには保育を保障することになります。総合こども園は総合こども園法に基づく学校と同等になり、さらに社会福祉施設としても位置付けることにしていました。
2020年までに保育士資格または幼稚園教諭資格のどちらかしか有していない人は、「保育教諭」の資格を取得することになります。子どもと保育者の対人数については、現行よりも向上させようとしていました。3歳児を15:1、4歳児を25:1にと想定していました。
新システムの課題と懸念のポイントは、「供給過剰」問題です。30年後の子どもの人数は現在の70%程度になると予想されていますから、自然淘汰されていくことが地方では大問題でした。
より「質の高い保育」を提供するために、職員人数や研修ができる体制確保などの質を上げるために地方は尽力すべきです。待機児童が多い都市部と全くいない地方とは税金の使い方が全く違っていくのです。
消費税を増税する方向で国会審議が行われていくようですから、総合こども園用に支出しようとしていた7,000億円を活用して、以前から大きな課題になっている保育者、社会福祉従事者全般の給与などの待遇向上を全産業平均までアップさせることです。新たに採用される人材が将来に夢を抱ける人生設計が可能な処遇を構築することは、現在働いている保育業界・社会福祉業界従事者の責務だと思っています。
Posted in 前園長(11代)須田 益朗の実践ブログ