保育園待機児童数の落とし穴
2012年05月01日 火曜日
杉並区公私立保育園総会の後半は、保育の今を学ぶ講演会が行われます。一昨年のこの講演会で埼玉県教育委員会の松井和先生から学んだ、「保護者の一日保育士体験」を育子園では行っています。このように保育実践につながる学びは本当に効果的です。
今年の講師さんは白梅短期大学教授でした。さすがと感じたのは講演会の冒頭、会場の参加者にご自身の声の大きさか適切かをされました、相手のことを本当に考えている人柄に触れることができました。
さて、講演会の主題はブログでも何回も登場している、今国会で審議予定の子ども・子育て新システム(以下、新システム案)に関してです。
先生は、まず新システム案に「反対」という意思表示をきちっと持っていらっしゃいます。『世界5月号』や『子どもと文化4月号』も先生の解説が載っています。
子ども・子育て新システムはとても難解で、当初の提案とかなり違ってきています。たとえば待機児童問題もここ10年で国は考え方を現場に相談もしないで、表面的な数字を操る手法で変えてきました。児童福祉法第24条に記されている待機児童数と現在の手法でカウントされている児童数は大きくかけ離れていますから、新聞報道等の待機児童数は氷山の一角であり、全く意味のない数字になっています。
ちなみに、公表されている2011年4月の待機児童数24,666人、10月46,620人と年度途中で必ず増えていきます。その内、80%が0~2歳児なのです。さらには、審議予定の新システム案は待機児童すら、地方公共団体がカウントしなくなるというのですから大きな問題です。(文責:園長)
ここまでのお話を伺って感じたことは、
保育園に入りたくても入れない親子に手を差しのべることは24条に明確に示されている地方公共団体の社会的責務ですが、新システム案は入園の可否は保護者の、「自己責任」という発想が根底にあります。新システムになると待機児童が解消できると謳っていますが、ハードは整備されても保育者数は飛躍的に増加しないのですから期待できません。本当に保育を必要としている弱者に対して冷たいシステムをこの国は考えているようです。新システムは消費税10%、右肩上がりの経済が条件となっているのですが、未だに具体的な制度設計図が示されずに国会審議というのですから、保育現場から疑問の声が上がるのは当然といえます。
Posted in 前園長(11代)須田 益朗の実践ブログ