「まちの保育園」のカフェに学ぶ
2012年04月25日 水曜日
今国会で審議予定の、「子ども・子育て新システム」について同ワーキングチームに参画している、東京大学名誉教授・白梅学園大学学長の汐見稔幸先生が解説と将来日本の保育像を考察する学習会の最終編です。
新システムになると児童福祉法第24条が無くなります。現行法では保護者が保育園に入園したいと希望した場合は、行政は保育を提供しなければならない義務が規定されていますが、この部分が義務から「責務」に変わります。責務は努力義務と解釈されていますから、保育施策の後退を招くのではないか懸念されています。保育園を考える親の会は、保育への企業参入に反対していますが、社会福祉法人や学校法人への逆差別との声もあります。
乙武さんが参画して話題になった東京練馬区にある、「まちの保育園」は社会福祉法人が取得できず株式会社にせざるを得なかったのです。企業の社会ミッション、企業の志を第三者がきちんとチェックするシステムがあれば参入もありえるのでしょう。
さらに新システムになると幼稚園は3つに分かれることになりそうですが、時代の変化と共にそれも必要なことでしょう。
講演後の質問では、
2歳までの集団生活が大切だと思えない3歳児神話を崇拝する人達が多い日本ですが、その思想をどのように変えていけるのでしょうか。
それに対して先生は、
密室で育児をしている親子が幸福に過ごせる園を用意することが必要です。学力と経済力は比例していて、経済的余裕が無いと保護者はイライラしたりして子育てどころではなくなるのです。子どもは家庭で受ける影響が保育園や学校で受ける影響よりもはるかに大きいのです。閉塞的な家庭が子どもに与える影響は計り知れません。
保育ソーシャルワーカー等の役割が保育園にも必要不可欠です。親がホッとできる保育園設計が今後の大切なテーマになっていくでしょう。福祉と教育が高い次元で統合される時代に入っているようです。(文責:園長)
約2時間の中身の濃い学習会でした。保育ニーズに対する実施責任所在を行政に持たせることに改善されたのは当然のことといえます。新システム案では園と保護者の直接契約をうたっていますが、保育園に入れなくて困っている方々がいた場合、一緒に考えていくのは行政が主体になるのは当然の住民サービスと責務です。
汐見先生が最後に述べられた、親がホッとできる保育園設計が今後の大切なテーマになっていくでしょう。という点はその通りだと思います。育子園の職員と話し合うと、保護者と保育者という固定的・一面的な人間関係を打破する仕掛けが求められているように強く感じています。保育園と保護者、地域の人々がフラットに存在できる空間、乙武さんが参画して開園した練馬区にある、「まちの保育園」の「カフェ」に学ぶ点は大きいと感じています。
Posted in 前園長(11代)須田 益朗の実践ブログ