乳幼児期の不適切保育は国にとって大きな損失
2012年04月04日 水曜日
今国会で審議予定の、「子ども・子育て新システム」について同ワーキングチームに参画している、東京大学名誉教授・白梅学園大学学長の汐見稔幸先生が解説と将来日本の保育像を考察する学習会の続編です。
OECDのスターティングストロング(人生の始まりこそ力強く)は、地域社会が崩壊した現在では子どもが活発に活動する環境が劣悪になっていることを危惧し立て直そうとして各種プログラムを設定しています。諸国の就学前教育費と公費負担を比較すると、日本はかなり低い状況です。日本は先進国の中で最も子育てに個人負担がのしかかっている国なのです。
欧州では就学前教育はほとんど無償ですが、日本はどうして有償なのでしょうか。欧州は乳幼児期に良い保育を受けないと将来の国にとって大きなマイナスになると考えているのです。このように幼児に対して公金を投入する効果は本当なのでしょうか、アメリカのある地域では3歳児を対象にした知能検査を数十年続けて追跡調査を行っています。
その結果、ペリー就学前教育計画(経済的に恵まれない3歳から4歳のアフリカ系アメリカ人の子どもたちを対象に、午前中は学校で教育を施し、午後は先生が家庭訪問をして指導にあたる)の40歳時点での調査では、質の高い幼児教育を3歳の時に1年間だけ受けた人は、受けていない人と比較して、犯罪を犯す割合が低く、収入は高いという結果が出ています。
スウェーデンの8歳児を調査したところ、2歳までに質の高い保育園に入った子どもはおおむね優秀であるという結果も出ています。このように就学前に子ども集団で過ごした子どもはその国の役に立つ確率が高いのです。NICHDアメリカ厚労省の発達調査機関では、アメリカ全土1,300人を家庭内まで入って調査していますが、0歳から保育園に通っている子どもで質の高い保育を受けた子どもは、他と比較して健やかに成長しているという結果が出ています。日本の政府にはこのような調査すらしようとする発想は無いのです。唯一、お茶の水大学の菅原ますみ先生が細々と行っていらっしゃるだけのようです。(文責:園長)
お話を伺って、改めて日本は0歳から就学前までの子どもの環境整備が遅れているか明確になりました。子どもは国の宝と言われてはいますが精神的なもとと共に子育て環境整備が必要です。自己肯定感が確立されてしまうおおむね3歳までを含む、就学前こそ宝物のように見守ることこそ、人づくり国づくりの肝といえるのでしょう。
その世代への投資をし続けることを怠らなければ、時を経てその投資は無限の果実をこの国にもたらしてくれる仕掛けになっているようです。
Posted in 前園長(11代)須田 益朗の実践ブログ