世界乳幼児精神保健学会の提案
2012年04月02日 月曜日
今国会で審議予定の、「子ども・子育て新システム」について同ワーキングチームに参画している、東京大学名誉教授・白梅学園大学学長の汐見稔幸先生が解説と将来日本の保育像を考察する学習会の続編です。
山梨大学の中村教授は、子どもの運動能力を長期間にわたって調査しています。たとえば飛ぶ走るなど瞬発力は25年前と比較すると、今の5歳児は当時の3歳児と同じレベルだそうです。外遊びが十分できていない子育て環境が子どもの身体発達を妨げている状況が明白になっています。さらには運動機能だけでなく、3歳までに外遊びなどで脳視床下部、扁桃体を鍛えないと危険回避判断能力が育まれないという課題も突きつけられています。
論理は感情が形を持ったものと考えられていますから、最初に大事なのは感情です。感じるという感覚世界を子どもがいかに豊かに表現していける環境を用意していくか、子どもが走り回ったりじゃれたりすることは情動の発達を促すのに必要不可欠です。
現在社会は大人にとっては快適で便利ですが、子どもにとっては課題が山積しています。子どもは全身体を使って感覚を獲得していくのですが、大人がそれを取り去ってしまっています。
子どもを地域で放牧できていた時代は、子どもは3歳まで家庭で育てることが良いとされていましたが、世界乳幼児精神保健学会ではコリック(夕暮れ泣き)を体験したおおむね生後4カ月から全ての子どもは保育園に入園したほうが健やかに育つと発表しています。2歳までに落ち着いた温かい環境の中で育つことが、子どもの自己肯定感(自尊感情)を高めることなのですが、このことに関して日本は世界の中でずば抜けて低いのです。
自己肯定感は私(汐見先生)が作った言葉ですが、おおむね2・3歳までにその感情は出来上がってしますのです。とにかく子どもの要求を受容してあげる、そのまま受け止める、頭ごなしに叱らないこと、子どもを抱きしめてあげることで自己肯定感は出来上がっていくのです。これはその子の人生を左右する大きな感情で、エリクソンの8つの発達段階においても乳幼児期のベーシックトラストがとても大切です。繰り返しますが、日本では運動能力発達遅延と心の発達遅延が大きな課題です。(文責:園長)
お話を伺って、たとえば飛ぶ走るなど瞬発力は25年前と比較すると、今の5歳児は当時の3歳児と同じレベルに陥っているという結果は、。放牧できなくなったことを証明しています。放牧時代はゲーム機で遊ぶことなど無く、現実空間を走り回りよじ登り、大人が知らない子どもだけの秘密基地を造ったり、転んだり落下したりとケガを繰り返しながら日没まで過ごせたのです。そこでは自然発生的に異年齢子ども集団が成立していますから、お互いの前頭葉発達に貢献していたのでしょう。
Posted in 前園長(11代)須田 益朗の実践ブログ