3.11後、杉並の保育園現場では…
2012年01月31日 火曜日
杉並区保育課主催の、「被災地からみえるこれからの保育と保護者対応」研修の続編です。
DVD放映の後、杉並区内認可保育園に勤務している保育者がグループに分かれて各保育園の現状と課題抽出を行いました。
○避難ルートの課題があります、行政から示されたルートは住宅街の狭小道路があり擁壁倒壊などで通行できないことも想定され、第二第三のルートの確認が必要です。
○耐震補強がなされていない園舎の場合は園外に避難もしくは近隣の公施設に避難することになっていますが、一刻も早く耐震補強を要望します。今年4月からその園舎は使用しないことになりました。
○3.11当日は卒園式後の謝恩会中だったので、在園していた4歳児以下40人が歩いて公民館に避難しました。道中では近隣の人たちが誘導してくださり安全確保を手伝ってくれました。本当に有難かったです。
○震災発生後は実際に避難ルートを大人が先遣し、確認してから子どもを誘導することが安全確保になると思います。また、保護者に避難ルートを伝えること、避難訓練を増やすこともよいのではないでしょうか。
○散歩時に地震発生の場合、園に戻るのか、避難所に直行するのか決めておくことが必要です。
○備蓄品が不十分だと思います、3.11にはコンビニで食料調達しましたが、売り切れた食品が多くあり、乳幼児用の確保に苦労しました。
○園内に行政の備蓄倉庫があるのですが、園は関与できないシステムのようなので改善してほしいです。
○3.11は午後4時に大型スーパーは閉店していました。園によって備蓄倉庫がある場所とない場所があります。確認しておくことが大切です。3日間の備蓄が必要ですから、行政で緊急に確保をしてください。
○日ごろの安全教育として防災DVDや紙芝居、かるたを杉並区でも制作するとよいのではないでしょうか。
○子どもを保護者以外の人(在園の他保護者、知人等)に引き渡すことがよいのか、3.11には降園途中で亡くなった方がいたので、責任問題になるのではないでしょうか。
○職員の勤務体制を決めておくことも大切です、早めに帰宅する人、最後まで保育を行う人など、職員の役割分担確認しておくと腰を据えて勤務に専念できると思います。
○職員は2泊3日泊るつもりで宿泊セットを用意しておくが必要だと思います。
○地域との連携が重要だと思います。近隣の企業や商店が手伝いを申し出てくれている保育園もあります。日ごろから情報交換をすることも大切です。町内会や商店会と日ごろから付き合っておくことが大切です。
○保護者との連絡方法に対する不備があります、保護者へのメール配信を小学校でやっているのに保育園ではなぜできないのでしょうか、ツイッター、固定電話の活用、情報伝達としてラジオしかないので園にテレビが欲しいです。なかにはメールアドレスを園に教えてくれない保護者がいます、信頼してもらっていなのでしょうか。
○保護者に対して、急いで保育園に迎えに来なくてもいいですよ、安心しても子どもを預かっていますよ、という手紙を配布しました。お迎えに来れない親の気持ちを察して、子ども達をその間どう守っていくか、安心してもらえるようにしていきたいと思います。
○勤務中に職員が携帯を持てないようになっているが、緊急時は必要だと思います。園にテレビが無いので3.11だけは携帯ワンセグで情報を収集しました。モラルを守っていけば良いのではないでしょうか。
○園長が変わると地域との連携に変化があります。避難場所の中学校との顔合わせができていなかったので、避難訓練で門まで行っても中に入れなかったことがありました。
○杉並区保育室は月16日勤務職員なので避難訓練が難しいです。親が迎えに来れないことを想定した対応が大切です。
○地域資源として、井戸水、会社や企業、一時避難場所、備蓄品の確認、地域の人材活用など早急に確認すべきです。
以上のような保育現場で子ども達や保護者に対応しているから提案できる諸課題が抽出されました。
遠い未来のことではなくなった首都直下地震。災害情報入手困難、帰宅困難者続出、火災、停電など想定されることが様々あります。保護者は子どもに一刻も早く会いたいと思いますが、まず保護者はお迎えを急がずに、自身の安全確保をしてから、周辺状況が落ち着いて保育園に迎えに来ることが大切です。子どものお迎えを急いだあまりに、お迎え途中に被災した保護者が3.11に多数いたのです。
東京都は提案しています。3日間をどうしのぐか、保育園で出来る最大限の対策はどのようなことか。地域防災、井戸水や危険物場所を把握しておくことも大切です。避難しながら保育を行うことも想定されますから、子ども達の気持ちの安定を促す配慮も重要です。
Posted in 前園長(11代)須田 益朗の実践ブログ