子育て世代の長時間労働は日本だけ?
2011年10月04日 火曜日
過日行われた杉並区内公私立園長会での、明星大学垣内先生講演会の後半です。
現在審議している子ども子育て新システムの基本は介護保健と障害者自立支援法です。このシステムの最大の問題点は、市区町村の入園選考義務をなくすことです。介護保険と同じシステムを考えていうのですから、保護者に園を選ばせて面接や入園手続を自己責任で行わせようとしていることです。
社会福祉の基本理念が崩壊するシステムを実行しようとしているのです、行政は何も責任を負ってくれません。介護保険も70%が営利事業者ですが、経営・運営上様々な問題を起こしているのが現実です。国から各市区町村に配られる予算配分が自由になるので、区市町村によっては子どもにかける予算を現状と同じように確保するか大変疑問です。各市区町村が保育園児一人にかかる費用を10と数と、幼稚園児は1で済むので、保育園の予算を削減数でしょう。
現在でも日本は保育に対する予算をOECD平均の3分の1しか計上いないのに、さらに引き下げる可能性が高いのです。現在の日本の保育園の基準は世界最低です。たとえば、保育者1人で3歳児を何人保育するかというと、日本は20人ですが、フランスは8人、アメリカは7人、ニュージーランドは6人、これが現実です、日本の状態は子どもの発達を保障する体制ではありません。
ですから、新システムに対しては、幼稚園・保育園各団体、多くの自治体が慎重審議を要望しています。
埼玉全県で正規保育士は40%、非正規保育が60%という実態です、実際はここまで落ち込んでいるのです。ある保育園では年間2回も担任が変わった園もあるように、保育現場は荒廃しかけているのです。介護現場では職員確保すらできない施設が数多くありますから、新システムになると保育園もそのようになることが危惧されます。
保育士になって5年間勤務すればいいほうで、3年で辞めてしまう保育士が増加しているのです。その理由の一つには、職員同士が保育実践を語り合える状況ではないことにあるようです。介護の世界では20歳も50歳も同賃金で将来展望も描けない業種ですが、保育もそのようになる時給制になる可能性があります。(文責:園長)
明星大学の垣内先生を招いて杉並では数回学習会を行っていますが、3.11による大きな保育環境変化と対策、子ども子育て新システムが具体化する岐路で、保育現場でどのように具現化するか喫緊の課題です。子育て世代の長時間就労を促進するために、今以上に子ども達を長時間保育施設に預けるシステム企てようとしているのは、世界的にみるとどうやら日本だけのようです。この先もさらなる右肩上がりの経済活動を続けたい日本的発想が本当に持続可能なのか、根本から見直しをする勇気も必要ではないでしょうか。
Posted in 前園長(11代)須田 益朗の実践ブログ