「おしんの遺言」から学ぶ
2010年10月25日 月曜日
今から27年前の昭和58年、日本国民はお化け番組にくぎ付けでした。それはNHK朝の連続テレビ小説で放送された「おしん」、空前の大ブームで最高視聴率62%という大記録を誇っています。当時は日本全国、老若男女がリアルタイムで毎朝8:15と12:45に職場や家庭のブラウン管を見入っていたものです。
その「おしん」の脚本を書かれた橋田壽賀子さん(85歳)が、今年8月『おしんの遺言』を執筆されました。
視聴者は主人公「おしん」の辛抱につぐ辛抱を、我がことのように涙を流して観ていましたが、橋田さんが本当に伝えたかったメッセージは別にあったというのです。
それは「少欲知足(足ることを知る)」でした、バブル経済がハジケル前のいわゆるシーマブームやシャネルスーツ、ジュリアナ東京に象徴される「物欲」に翻弄されていた昭和への警告ともいえます。
自分の周りに無いものを追い求めても、永遠に幸せはきません。今、生きていること自体が最高の幸せだとおっしゃってきます。
さらに子育てについては、核家族化や少子化が進んで子どもに過度の期待を持つ親が増え、同時に子育てに悩む親が増えましたが、それは親の役割を勘違い・錯覚しているからです。
親の役割は「子どもの幸せを見つけること」です。子育てに悩んでいる親のほとんどが、子どもを自分のものだと勘違い・錯覚し、過剰なまでに期待して自分が描いたレールの上を歩かせようとし、その通りにいかないことを悩んでいるだけなのです。
そのことがどれだけ子どもの可能性を狭めていることか、親の都合であれもこれもと求められ、過剰期待をされる子どもは本当にかわいそうです。
親は子どもに期待などせず、子ども自ら育っていく過程をただ楽しめばいい。特に母親に最も大切なのは、子どもとの適度な距離感とクールな関係を保つことです。
子どもにお金と心を全て費やしても、自分の老後の面倒を見てくれるわけではありません。とはっきりと述べられています。
前段の「親」という表現をを保育者に置き換えてみると、従来の日本型一斉保育の様相を呈しています。
橋田さんの提言を具体化したものが、育子園で行っている子ども主体・子ども中心の「見守る保育」に他なりません。保育者の役割は「一人一人の子ども達が自ら育っていく発達過程を楽しみ、喜び、少しだけ援助する」ことなのですから。
Posted in 前園長(11代)須田 益朗の実践ブログ