世界で最もやる気の無い子ども達
2010年04月14日 水曜日
立川で民間保育園協会主催の施設長研修がありました。講師が京都大学名誉教授の鯨岡峻先生だったので、大きな期待を寄せて参加しました。
まさに期待通りのとてもためになる研修でした。そのポイントは、今まで日本の保育がやってきたことは、子どもの最善の利益といいながら、実は大人の利益(都合)だったのではないか。子どもに力をつけさせる保育、将来のためといいながらさせる保育、大人の思い通りにならないと怒る。子どもは怒られると、その行為を怒られたのではなく、自分の存在そのものを怒られたと思ってしまうので要注意。
子どもは将来ずーと恨んでいる。白黒つける保育はダメ。そんなことをしていたので、子どもの心を圧迫し、青少年、大人になって健全な成長を遂げていない。
なんでもできるように「させる保育」の結果、日本の小学生は世界の中で最もやる気の無い状態になっている。中学生においては60%が自分に自信を持てない状態になっている。
子どもの気持ちをまずは受け止めてからが保育の現場でもなかった。受け止める前に、指示命令をしているのではないか。その子が嫌いなものを食べさせたり、他の子は食べれるのにと比べては絶対にダメ。
保育園の役割は、養護と教育といわれるが、別のものではなく、日常の子どもと保育者の関わりの中で、常に繰り返されているものである。まず子どもの気持ちを受け止めることが(養護)、それから、でも今はこうしようかと提案する(教育)。いつもこのやりとりを必ずすること。これをやって行くのが質の高い保育である。大人がグイグイと子どもを引っ張るのはやめて欲しい。
大学で教鞭をとる傍ら、京都市の非常勤保育部長をしていて、30園を巡回すると、まだまだ昔ながらの管理保育を行なっている園が多いことにショックを受けている。見栄えのする保育や早期教育を行なって、保護者の受けを良くするのは懸命ではない。常に子どもの気持ちを受け止める保育、集団ではこれはできない。
毎日保育者は、子どもとの関わり方がその子にとって良かったのかを振り返ること。そのためには毎日「エピソード記録」を全保育者が記入し、職員会議等で発表して研鑽しあうことが、その保育園の理念に合った保育の質を高める早道。
先日の加藤先生の講演といい、鯨岡先生の講演も「子ども一人一人との関わり」の話です。いわゆるクラス集団でうんぬんなどという一斉保育の話は全くありませんでした。切り口はそれぞれの先生によって違いますが、「見守る保育」と同じ方向が子どもにとって最善の保育であることは間違いありません。
Posted in 前園長(11代)須田 益朗の実践ブログ